血友病性関節症って何?

2018.07.31

監修

奈良県立医科大学 人工関節・骨軟骨再生医学講座 講師 稲垣 有佐 先生

奈良県立医科大学 整形外科教室 教授 田中 康仁 先生

血友病性関節症とは?

血友病の方では、全身のさまざまな部位で出血しやすくなります。なかでも関節内で生じる出血(関節内出血)は、血友病の最も特徴的な出血症状のひとつです。関節内出血が繰り返し起こると、関節の内側にある滑膜(かつまく)という部分が増殖して炎症が生じ、痛みや腫れの原因となります。この滑膜の炎症状態が続いて慢性化してしまうと、関節軟骨が破壊され、骨が変形し、激しい痛みで関節を動かしづらくなります(関節可動域制限)。この状態が“血友病性関節症”【図1】です。

【図1】血友病性関節症
【図1】血友病性関節症

血友病性関節症はどの関節に起こるのでしょうか?

【図2】血友病性関節症の好発部位
【図2】血友病性関節症の好発部位

血友病性関節症が起こりやすい部位は、足や肘・膝の関節とされています【図2】。とくに、足関節は歩行の際に体重の負荷がかかるため、好発すると言われています。

血友病性関節症の診察・検査はどのように行われますか?

関節の診察では、関節の動きの滑らかさ、その範囲などを診ます。また左右の比較や、筋力の評価も重要です。画像評価では、X線検査、MRI検査、超音波(エコー)検査などが行われます。

血友病性関節症になったらどのように対応すればいいのでしょうか?

【図3】PTB装具
【【図3】PTB装具

血友病性関節症では、関節可動域制限や筋力低下によって、日常の活動性にさまざまな支障が生じます。例えば、膝関節や足関節の変形、可動域制限などで左右の脚の長さが異なってしまい歩き方が不自然になったり、筋力低下から関節が不安定となり関節内出血が起こりやすくなったりします。そのため、関節を守るために装具やサポーターなどを使用したり、左右の靴の高さを変えるなどの工夫を行うことが必要となります。もちろん、製剤などによる出血予防のもと、関節を痛めないように注意しながら、筋力を鍛えることは非常に大切です。

足関節に血友病性関節症がある方では、PTB(Patellar tendon bearing)装具という、膝蓋腱(しつがいけん:膝の皿の下にある腱)や脛の骨で体重を支え、足関節にかかる体重を軽減する装具を用いることもあります【図3】。当院ではこのPTB装具を小児の方で足関節手術の後に使用しています。

血友病性関節症の整形外科的手術にはどのようなものがありますか?

小児の方では、繰り返す関節内出血により増殖・肥厚し、さらなる出血の原因となっている滑膜を除去する滑膜切除術を行います。成人の方で血友病性関節症により関節の破壊・変形性がひどく日常生活に支障を来している場合は、関節を人工関節に置き換える人工関節置換術などが行われます。また足関節では関節固定術なども行っています。血友病性関節症で痛みがある方、日常生活に支障を感じている方は、一度、整形外科(できれば血友病性関節症の診療経験が豊富な)を受診し、相談されることをお勧めします。

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