“足にぴったり合った靴”を選び、靴紐や中敷き、インソールで調整しましょう。
では、“足にぴったり合う靴”とは、どのような靴でしょうか? “足にぴったり合う”と聞くと、“きつい靴”や“窮屈な靴”を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、そうではありません。足にぴったり合う靴とは、①甲の部分を紐で締めてしっかりホールドすることができ、②踵(かかと)部分にはある程度の硬さがあって踵の収まりがよく、③靴底は足指の関節部分で曲がり、④中には衝撃を吸収でき、取り外し可能な中敷きが入っていて、⑤靴底がぐにゃっと曲がらないように“シャンク”と呼ばれる芯(補強材)が入っている、⑥つま先部分には1cm程度の捨て寸があって足指の動きを妨げないものです。正しい靴選びのためのチェックポイントを示しますので、参考にしてください【図2】。
靴の専門家は、専用の測定機器を用いて足のサイズ(足長)やワイズ(足囲)※を正確に測定し、合わせて歩き方の癖やバランス、足の硬さや足裏の状態、そして普段履いている靴裏の摩耗状態などを調べて医学的根拠に基づいて分析し、適切な靴を選んでくれます。
また、足はアーチ構造になっていますが、年齢を重ねるごとに足の筋力が落ち、靭帯もゆるんでアーチ構造がへたって変形してきます。このため、40代ぐらいになれば、一度、資格を持ったシューフィッターやフットケアトレーナーなどに靴選びを相談するとよいでしょう。
さらに、靴を新調しても1~2ヵ月という短い期間で靴底が片減りしたり、履き口が大きく変形したりするような方では、靴のみならず、全身の歪みやバランスを整えて歩き方の癖を直す専用の中敷き(インソール)【図3】が必要なこともあります。こうしたインソールは、基本的にオーダーメイドになるので、靴の専門家がいるところで相談し、作製するようにしましょう。インソールを入れてバランスを調整し、その状態を維持できれば身体のアンバランスも次第に整えられてきます。
なお、これまでゆったりとした靴を履き慣れてきた方が、足にぴったり合った靴を履くと、最初のうちは少し窮屈に感じるかもしれません。しかし、革製のビジネスシューズであれば履いているうちに徐々に革が伸びてきます。また、ビジネスシューズの多くは甲の部分が紐で調整でき、中敷きも取り替えられるようになっています。まずはサイズやワイズを足にぴったり合わせたうえで、靴紐や中敷き、インソールで調整するとよいでしょう。「しっくりこないから」といって、すぐに靴のサイズアップをするのはお勧めできません。
ウオーキングシューズやゴルフシューズなども基本的にはビジネスシューズの選び方と同じです。しかし、日本のスポーツメーカーの靴は多くがワイドタイプのものであることに注意が必要です。
また、足に合った靴を選んでも、それを正しく履けなければ意味がありません。必ずイスに腰かけて靴ベラを使って足を靴に入れ、地面に踵(かかと)をつけた状態でつま先を上げ、紐を結ぶのが正しい靴の履き方です【図4】。靴の専門家が、足にぴったり合った靴を選ぶ手順をご紹介します【図5】。
- イスに腰かける
- 靴紐をほどき、履き口を大きく開いて、靴ベラを使って足を入れる
- 踵(かかと)を地面につけ、つま先を上げて靴の踵部分をしっかり合わせる
- つま先を上げた状態のまま靴紐をしっかり縛る
【図5】 足にぴったり合った靴を選ぶ手順
1. 情報収集(ヒアリング)
今履いている靴の状態を調べたり、問診をしたりして正しい靴選びのための情報を収集します。
2. 足のサイズ計測
体重がかかっていない(非荷重)時と、体重がかかっている(荷重)時の足の大きさをフットゲージとメジャーを用いて計測します。
3. フットプリント採取
フットプリントを採取して両足の体重のかかり方に差がないか、足裏に問題がないかを確認します。
4. 理想とする靴サイズの見極め
足のサイズ計測での数値から理想とする靴のサイズ・ワイズを予測し、試し履きをします。なお、靴を履く時には、靴ベラを使います。
5. 静止立位姿勢の観察
静止状態での肩や腰の傾きをチェックし、全身のバランスを観察します。