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スポーツ始めて
みませんか

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スポーツ始めてみませんか

2018.05.22

  • 監修:
    東京大学医科学研究所附属病院
    関節外科 診療科長
    竹谷英之先生

スポーツにはさまざまな種目があります。
からだを守るプロテクターの役割をする筋肉をつけるために
興味があるものや、楽しめそうなスポーツを見つけて始めてみてはいかがでしょうか。

  • 血友病の方には、関節内出血の予防という観点から、1970年頃まではからだを動かしたり、スポーツをしたりすることはあまり推奨されていませんでした。しかし近年、凝固因子製剤の定期補充療法が浸透し、止血管理が良好にできるようになったことで、血友病の方の身体活動は制限せず、むしろ積極的にスポーツに取り組むのがよいという考え方に変わってきています。

  • 血友病の有無にかかわらず、成人の方がスポーツをすることには、多くのメリットがあります【表1】。からだを動かしたり、スポーツをしたりすることで身についた筋肉は私たちのからだを守る“プロテクター”のような役割をするからです。特に血友病の方はこの筋肉のプロテクターがあると、関節への負担が減少して関節内出血の抑制につながるほか、日頃からスポーツをしておくとたとえ転びそうになったとしても俊敏に動け、また踏ん張る力もあるので転倒の危険性を回避することができます。

    『からだの調子もいいし、何か新しいことを始めてみようかな』と思い立ったら、一度、スポーツにトライしてみませんか。まずは一回やってみるという、「一歩踏み出す勇気」が大切です。スポーツを長く続けられるようにするために、自分のからだと相談しながら少しずつ始め、途中で何か不具合が起これば、やり方や強度・種目を変えるという、“トライ&エラー(試行錯誤)”の方式でやってみるのがよいと思います。

    ひとくちに“スポーツ”と言ってもさまざまなものがあります。「スポーツ」と聞いてすぐに思い浮かぶような、野球やサッカーなどの球技、あるいは陸上のトラック競技のようなフィジカル(肉体的)な種目はもちろんのこと、欧米ではチェスやビリヤードなどはインテリジェント(知的)スポーツとして位置づけられています。さらに最近話題となっている、対戦型のコンピューターゲームを用いてバーチャル競技として行うeスポーツ*も、広義ではスポーツの範疇に含められるでしょう。

    『血友病があって、出血の危険があるから怖くてスポーツはできない』と決めつけるのではなく、あまたあるスポーツの中から興味があるものや、楽しめそうなものを見つけて気軽に始めてみてはいかがでしょうか。

  • 表1 スポーツのメリット

    からだを守るプロテクターとなる筋肉の発達促進

    運動能力強化によるバランス感覚向上・転倒予防

    ストレス発散

    適正体重の維持

    生活習慣病の予防

    骨密度の維持・減少抑制

    QOLの向上

    自信や達成感の獲得

    竹谷英之先生ご提供

*eスポーツ(esports):
エレクトロニック・スポーツの略で、広義には電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称

[一般社団法人日本eスポーツ連合 Japan esports Union(JeSU)ホームページより( https://jesu.or.jp/)]
閲覧日:2018年4月10日

外部サイトに移動します。

リンク先のウェブサイトは中外製薬株式会社が運営するものではないことをご了承ください。

人と激しく接触するような出血リスクが高いものでない限り、
基本的にやってはいけないスポーツというのはありません。
一方で、ウオーキングや水泳は、みなさんにお勧めできるスポーツです。

運動の強度や接触の有無、からだにかかる負担などは種目によって異なります。このため、米国血友病財団(NHF)では、ケガをするリスクを考慮してスポーツの種目を「低リスク(レベル1)」「低~中リスク(レベル1.5)」「中リスク(レベル2)」「中~高リスク(レベル2.5)」「高リスク(レベル3)」の5段階に分類し、血友病などの出血性疾患がある方にはレベル1~2のものを推奨しています【表2】。からだにかかる負担がスポーツによって異なるのと同様に、血友病の重症度や関節の可動域は人によって異なりますし、種目に対する好みや得手不得手も人によって分かれるでしょう。したがって、チャレンジしてみたいスポーツがたとえレベル2.5以上のものであっても、あきらめる必要はないと思います。私は、基本的にやってみたいと言うものは、それがよほど人と激しく接触する危険なものでない限り、きちんとした止血管理がなされていれば、どのような種目であっても『ご自身のからだと相談しながらトライしてみてください』と背中を押すようにしています。

また、自宅にこもりがちになっている方には、『気分転換に家の周りを散歩してみませんか?』『通院時には、駅から病院まではタクシーではなく、ウオーキングにしてみませんか?』とお勧めすることもあります。ウオーキング、すなわち「歩くこと」は、人間にとって大事な基本能力です。ウオーキングならば、生活に即しており、特別な道具も必要としないので、手軽に始められると思います。また、ウオーキングと同様に、水泳も関節への負荷が少ないのでお勧めです。

まずはご自身でやってみたいと思うスポーツにチャレンジしてみてください。やっているうちに、楽しくなり、例えば水泳であれば、「以前より長い距離が泳げるようになった」ということが自信につながり、継続する励みになってくると思います。

表2 米国血友病財団(NHF)でのリスク分類

詳しくは、こちらをご覧ください。

National Hemophilia Foundation(NHF):Playing it Safe Bleeding Disorders, Sports and Exerciseより一部改変
https://www.hemophilia.org/sites/default/files/document/files/Playing-It-Safe.pdf
閲覧日:2018年4月10日

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スポーツを始める前には主治医と相談し、
止血管理の状況や全身の身体機能を確認するようにしましょう。
また、X線検査で関節評価をしておくと、
その後、そのスポーツを継続してもよいかの客観的な評価ができます。

実際にスポーツを始める際には、主治医に伝え、どのような止血管理(定期補充療法・予備的補充療法)が必要になるかの指導を受けるようにしましょう。また、できればその時点でX線検査を行っておくとよいでしょう。医師によるX線検査での関節評価は重要です。なぜなら、自覚症状があまりなくても血友病性関節症が進行している場合もあるためです。また、スポーツを始める前にX線検査を行っておくと、その検査結果(画像)とスポーツを始めた後での画像を見比べることで、どのように関節が変化したかを医師が評価することもできます。

『これぐらいは大丈夫』と自分の感覚で始めたスポーツが、本当に自分に合っているか、続けても支障がないかを医師がX線検査で経時的、かつ客観的に評価することは将来の体調のためにもとても大切だと思います。

スポーツ開始時にはウオーミングアップ、終了時にはクーリングダウンを行いましょう。
スポーツをして出血が起こった場合はまずは「R.I.C.E」で対応してください。

  • いきなりからだを動かすと関節に負担をかける上に捻挫などのケガにつながります。スポーツを開始する前には必ず柔軟体操などのウオーミングアップを行い、からだをほぐすようにしてください。また、スポーツを終了した後はストレッチなどを行ってクーリングダウンし、スポーツで上昇した筋肉の温度を下げるようにしましょう。

    スポーツを行っている最中に、体調がいつもと違うと感じたら、休止して安静にするか医療機関を受診するのかをご自身で判断し、適切に対処していただくことが大切だと思います。

    もしも運動中に関節内出血や筋肉内出血が起こった場合は、事前に担当医と決めておいた止血方法を行うとともに、「R.I.C.E(安静・冷湿布・圧迫・拳上)【表3】」を行ってください。なお、関節内出血や筋肉内出血といった明らかな出血が起こった場合には、スポーツを再開するまでの期間は、担当医との相談になりますが、およそ10日~2週間が目安となるでしょう。また、運動の再開時は、急に全力を出すと出血の再燃につながるので、少しずつからだを慣らしていくようにしましょう。

  • 表3 関節内出血や筋肉内出血時の対応「R.I.C.E」

    Rest(安静) 横たわり、安静を保つ
    Ice(冷湿布) 氷や保冷剤、冷却スプレーで患部を冷やす
    Compression(圧迫) 患部を適切に圧迫する
    Elevation(拳上) 患部を心臓よりも高い位置に保つ

「スポーツを始める前の医師とのコンサルテーション」は、
自身の体力や血友病についての知識をあらためて確認するよいきっかけになると考えます。

スポーツを始めるにあたって、一度、X線検査を行って関節の状態を把握しておいたり、自身の止血管理の状況を見直したり、医師とじっくり話すことは非常に有意義なことです。私たちのからだは年齢が進むとともに、どんどん変化していきます。血友病治療の情報を最新のものにアップデートし、今のからだの状態を正しく把握しておくことはとても大切なことだと思います。

スポーツを始めるのに遅すぎることはありません。ご自身で興味があるもの、楽しめそうなスポーツにぜひチャレンジしていただきたいと思います。さあ、あなたも一歩、踏み出してみませんか。

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