全国の患者会を繋ぐ
「ヘモフィリア友の会全国ネットワーク」

2023.02.28

血友病患者さんやそのご家族を取り巻く様々な課題を広く社会全般、行政や政治に働きかけてよりよい社会を実現したい、そんな思いで活動をされている皆様にお話を伺いました。

(2022年10月18日にzoomにてインタビュー実施)

患者会はいつもそばにあります

まず、患者会に入ることで得られることを教えてください。
松本さん:治療の進歩により、近年では、患者さんの生活や治療の困り事がかなり減ったようです。また、ここ十数年の血友病医療の進化が非常に早かったため、各世代間で受けている治療が異なり、先輩患者さんの経験をそのまま追体験して学べることが少なくなったかもしれません。
しかし、血友病と生涯うまく付き合っていくという気持ちは同じです。病気を持たない友人にはわからない共感がここでは得られるかもしれません。
夢に向かって突き進むとき、立ち止まって考えるとき、悩みを抱えて心が小さくなるとき、どんなときにも患者会は患者さんとそのご家族のそばにあります。「共感」「支え合い」が私たちの重要な役割です。
患者会の中でどのような役割を持っているのでしょうか?
松本さん:日本の血友病患者会は全国各地にあり、それぞれが独自に活動を行っています。私たち全国ネットワークは各患者会を緩やかに繋ぎ、それぞれの患者会の活動をサポートする役割を担っています。2年に1回、全国の患者会が集う「全国ヘモフィリアフォーラム」を開催するなど、患者会同士やその関係者(家族や医療者)がうまく連携できるような取り組みを行っています。

患者会は患者さんの声を社会や行政に届けるという重要な役割もあります

昨今、血友病に関してもインターネットやSNSなどで簡単に情報が得られるようになりつつありますが、その中でも患者会に参加する意義はなんでしょう?

松本さん:血友病は患者さんの数が少ない疾患で、専門の医療機関が近くになかったり、学校や勤務先の理解が得られなかったりという状況が珍しくありません。患者会に所属していれば、患者さん個人の力では難しいことでも、同じ困り事を持つ仲間の経験から解決策を考えたり、患者会を通じて、社会あるいは国や行政に対して、声を届けたりすることができます。

西田さん:血友病は高度な治療を公費負担で受けることができますが、この医療環境が実現した背景にもこうした患者会の長年にわたるアドボカシー活動があったのです。
今、患者中心の医療や患者の治療参画の推進によって、さまざまな疾患で治療と社会活動を両立するための支援が充実してきています。未来に向かってチャレンジしていくためにも、日ごろから問題意識を持ち、患者会の一員として、ともに声を届けましょう。

※ 一人ひとりが問題について知り、その原因について声をあげ、 解決のためにできることを訴えていくこと

数が少ないからこそ、声を集める必要があるということですね。
松本さん:はい。集める必要があるのは「声」だけではありません。「患者レジストリ」といって、患者さんの同意の下、治療内容、治療経過などを登録して、多くの血友病患者さんの情報をデータベース化しようとする動きも始まっています。
患者さんの情報を一元管理することで、転居先や旅行先でのアクシデント、災害に見舞われた時など、どの医療機関でも素早く適切な対応ができるようになれば大きなメリットとなります。
また、患者登録によって治療データや患者さん自身の評価を取り入れて自己分析することも可能にするシステムが考えられています。治療によって患者さんたちのQOLが向上し、社会参加が促進されているというデータを示すことで、医療費を公費負担する意義の裏付けや新しい治療の開拓につながると期待しています。
レジストリ登録が開始された際には、医療機関で行われる患者登録にご協力いただきたいと思います。

血友病保因者の女性への支援や海外への波及にも取り組んでいます

最近、特に注力されている課題への取り組みはありますか?

松本さん血友病保因者の啓発やサポートです。血友病の患者さんはほとんどが男性ですが、血友病の遺伝子を持つ女性は保因者と呼ばれ、保因者女性も出血しやすいことがあります。保因者の多くは、血友病患者さんの姉妹、娘、あるいは母であり、家族として血友病患者さんを支える立場ですが、これまでクローズアップされることがなくサポートが行き届いていませんでした。 保因者の女性が抱える結婚や妊娠・出産への不安や悩み、また、月経過多や貧血、けがなど日常の健康管理についても十分な情報発信とサポートを充実させたいと思います。

全国ネットワークは世界血友病連盟(WFH)の日本代表団体(NMO)でもあるそうですが、どのような活動をされているのでしょうか?

松本さん:世界血友病連盟(WFH:World Federation of Hemophilia)は147カ国が参加する世界保健機関(WHO)公認の世界ネットワークで、ヘモフィリア友の会全国ネットワークも日本代表として、2016年からその一員となり、定期的に開催される世界会議にメンバーを派遣しています。
WFHは1963年の設立以来、患者自身が主導して類を見ない先進的で重要な取り組みを続けています。患者視点の調査研究、発展途上国に対する薬剤提供・教育などの国際貢献もその活動の一部です。2000年以降は「すべての患者に治療を」というスローガンを掲げ、血友病だけでなくさまざまな先天性出血性疾患の患者さんと保因者へと対象を拡げ、発展途上国での治療の普及にも貢献し、日本もこれに参画しています。
WFHの活動に安定的に参加すること、そして、2年に1度開催されるWFH世界会議を、いつの日にか日本で開催することが当ネットワークの希望です。

松本さん:また、2021年7月、「ヘモフィリアを語る」というムックを刊行しました。
血友病という疾患について、また治療や患者さんの暮らしやさまざまな課題について、過去から現在、さらに将来展望などについて8つの座談からまとめました。この本を英訳して、WFHを通じて世界の人々に日本の血友病患者さんの声を届けたいと思っています。

※この本には様々な世代の患者さん、ご家族、保因者の皆さん、医療に携わる皆さんに、知っていただきたい情報が詰まっています。
患者さん、ご家族には無償で送付しておりますので、ヘモフィリア友の会全国ネットワークの下記サイトをご参照ください。

『ヘモフィリアを語る~Talk About Hemophilia~』に関するお知らせ。
https://hemophilia-japan.org/news/2022-03-15.html (外部サイトに移動します)

ぜひ、積極的な参加をお待ちしています!

患者さんやご家族へのメッセージをお願いします。

松本さん:患者会の活動を今後も継続していくためには、次世代にこの活動を継承していくことが不可欠です。現在、血友病であっても、学校生活やスポーツ、社会での活躍など、血友病でない人と変わらない自分らしい生き方ができるようになっています。血友病と診断されて間もない子どもたちやご家族にとって、今の若い世代の活躍は希望であり、ロールモデルとなれる存在です。
今後、デジタルツールを活用し、地域の枠を越え、グローバル化も視野にいれた活動を増やしたいと考えています。ぜひ若い方をはじめとした患者さんにも患者会活動にご参加いただき、積極的に関わってもらいたいと思っています。

患者会について知りたい、入り方がわからない、という方はどうすればいいでしょうか?

Mさん:当ネットワークにお問い合わせいただければ、該当地域の患者会に連絡の上、地域の患者会をご紹介します。

松本さん:また、地域に患者会がないという方々は、ぜひ患者会を結成しましょう。当ネットワークでは患者会結成に関するお手伝いもさせていただきます。ぜひご相談ください。

関係者の写真

当会の活動や様々な情報をWebマガジン『パルフェ(Parfait)』にて広報、会員にはメールマガジンとして送信しています。

お話をうかがった方

理事長 松本剛史さん(三重大学医学部附属病院 輸血・細胞治療部 講師)

血友病B。診断当時は治療は輸血のみであった。自分の病気を知りたいことと、血友病患者さんの役に立ちたかったので血液内科医を目指した。三重の血友病患者会の代表と2017年から全国ネットワークの理事長も務める。

アドバイザー 西田恭治さん(国立病院機構大阪医療センター血友病科/感染症内科 医長)

血友病A。東京医大で血友病とHIV感染症の臨床と研究を行い、2008年から大阪医療センターに移動。感染症の有無にかかわらず感染症内科で血友病診療し、2021年から「血友病科」を新設。

理事 M.Sさん

一人息子が血友病で、社会人になった。幼少期に目の手術を経験したが、特に大きな出血症状もなく元気に過ごす。私自身は自分のできる範囲で、患者会活動に携われればと思っています。

一般社団法人ヘモフィリア友の会全国ネットワーク(National Hemophilia Network of Japan)

https://hemophilia-japan.org/ (外部サイトに移動します)

【創立】
2008年3月(法人設立 2012年12月) 
【理事長】
松本剛史
【会員数】
地域血友病患者会25団体(2022年11月現在)
【所在地】
大阪市北区西天満6-2-14-80
【連絡先】
Mail:webmaster@hemophilia-japan.org
【活動内容】
全国各地の血友病患者会を緩やかに繋ぎ、血友病患者さんとその関係者(家族や医療者)の連携を強化することを目的とした組織です。
活動内容は、加盟団体への最新情報の提供や交流イベントの企画・実施、医療関係者やNGOとの連携・意見交換、患者会が存在しない地域の患者支援とネットワークの構築、血液凝固異常症の女性や若手患者グループへの支援など多岐にわたります。さらに、広く社会全般に向けた情報発信、行政や政治に対する働きかけも、全国ネットワークの重要な役割として取り組み、世界血友病連盟(WFH)の日本代表団体(NMO)でもあります。
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