ゆるやかに、心の拠りどころを次世代へ
「鶴友会」

2024.03.15

患者さん本人にとって、親にとって、心の拠りどころになる患者会。肩ひじ張らず、楽しく集える活動を続けようとされている皆さんにお話を伺いました。

(2023年12月11日、TKP名鉄名古屋駅カンファレンスセンターにてインタビュー実施)

次世代への橋渡しを目指して

鶴友会(かくゆうかい)について教えてください。

山田さん:鶴友会は主に愛知県内の血友病患者とその保護者からなる患者会です。今現在、82家族、92名が参加されていて、参加の規定は、類縁疾患の患者さん本人、もしくは家族となっています。会員が互いに協⼒して助け合い、患者と家族を守るための活動を、ゆるやかに続けています。
初めて子どもが血友病だと分かった親御さんに対して、先輩たちが経験談を話して不安を和らげ、それを聴いていた人たちがまた先輩になっていく。そうやって鶴友会は継続し発展してきました。治療の進歩によって日常生活が普通に送れるようになってきた子どもたちは、大きくなると自主的に会に参加しなくなる傾向はあります。しかし、完治可能な病気になったわけではありませんから、やはり人生の節々で戸惑う場面も出てきます。若い世代への橋渡しが、私たち患者会の大きな役割でもあると考えています。

鶴友会ではどのような活動をされていますか。

山田さん:主な活動は年に1回の総会と、同じく年に1回の半日交流会です。
半日交流会は、血友病のお子さんをもつお父さん、お母さんが中心です。名古屋大学医学部附属病院に全面的に協力いただいていて、敷地内の会館を借りたり、専門医の先生方が参加してくださったりしています。以前は平日開催でお母さん方が中心でしたが、土曜日開催にしてからはお父さん方も参加されるようになり、大きな会合に発展しました。
ピーク時には総勢120名ほどが集まっていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大で中断して、ようやく再開可能になったところです。コロナ禍ではオンラインも活用しましたが、何気ない情報交換のためには、やはり顔を合わせて交流することが大切だと感じています。

仲間からの学び、自分の経験や気付きを伝えたい

鶴友会への参加のきっかけを教えてください。

Yさん:私は血友病Aの患者です。幼少の頃から鶴友会の会員ではありましたが、成人を過ぎるまでは資料をもらうだけで、会合には参加していませんでした。当時は、差別などが怖くて、親も私も周囲に病気のことを隠していたからです。
しかし、大学を卒業し、自立していくなかで「自分で体調管理ができるようにならないと」という思いがだんだんと強くなりました。また非常に出血を多く経験した時期とも重なって、改善できる方法はないかと、全国ヘモフィリアフォーラムに参加しました。
フォーラムでは、さまざまな方の症状や生活の様子を聴くことができ、前向きな気持ちになれました。特にボクシングをしている方に出会ったことは、これまで守りの姿勢から抜け出せないでいた自分の気持ちを「いろんなことやっていいんだな」と切り替えるきっかけになったと思います。

Oさん:私は血友病Aの患者で50代です。鶴友会には幼少の頃に入会し、キャンプなどに行った記憶があります。成人後、サラリーマン時代は時間がとれず、会合には参加していませんでした。しかし5年くらい前に自営業に転身したこと、50歳を過ぎて老眼に伴う自己注射への不安などを感じ始めたことを機に、再度参加するようになりました。私自身の加齢に関する不安という面では、直接ご高齢の方と話をする機会はまだあまりないのですが、勉強会などは参考になっています。

参加後に、心境の変化などはありましたか?

Yさん:フォーラムへの参加を機に、守りの姿勢から抜け出した私は、病院で痛み止めの薬を処方してもらいながら、水泳を始めました。全身に筋力がつくと、出血は激減し、もう何年も出血が起きていない状態を維持しています。
最近、勤務先の会社のトップと直属の上司に、やっと病気のことを伝えることができました。自分の仕事にも自信が出てきたからだと思います。

Oさん:私も今、ジムに通っています。私の子ども時代はというと、ボールを蹴っただけでも足首から出血してしまう状態で、スポーツには親しめなかったのですが。加齢に伴い、成人病のリスクが高くなり、かかりつけの先生から減量を勧められたこと、また整形外科の先生から、関節痛軽減のためには、無理のない範囲で筋肉を付けたほうがよい、と言われたのがきっかけです。そのおかげで、出血の回数も減り、以前よりも長距離を歩けるようになりました。ジムのインストラクターさんには、血友病だから配慮がいるという話ではなく、足首の軟骨がすり減っていることを伝え、筋トレのアドバイスを受けています。たまに腕や足をぶつけることはありますが、今のところ、筋トレが原因で出血とかはありません。
このような経験も患者会のメンバーに伝えて、何らかの参考になればと願っています。

父親として子どものためにできること

患者さんの親、とくに父親の立場からの参加のきっかけを教えてください

Iさん:私は血友病A患者(10代)の父です。鶴友会の存在は、名古屋大学医学部附属病院で子どもが血友病と診断されたときに教えていただきました。母親に比べ、私は日常生活で関わる機会が少ない分、少しでも子どものためにできることをしたい、いち早く最新情報を得たいという思いで入会しました。
父親の立場からすると、父親ならではの悩みを抱えている場合も少なくありません。インターネットの情報も多くなり、参考になるとは思いますが、実際の体験談を聴き、話し合うことは、格段に多くのものをもたらしてくれると思います。

山田さん:私の子どもは血友病Bで20代になりました。血友病と診断された当時は「血友病とは何か」も知りませんでしたから、インターネットで調べたのですが、当時はあまり情報がなく、個人の方のサイトで鶴友会を知り、入会しました。理事になったのは、うちの子どもと同学年ぐらいのお子さんをもつお母さんに依頼されて「父親として何らかのかたちで関わっていこう」と思ったからです。

父親として、会ではどのような役割を担っていますか。

Iさん:私の子どもは今、中学生になっていますが、鶴友会への参加は積極的とはいえず、友だちをつくって交流しているということもありません。その理由は、大きなトラブルもなく、運動部にも入り普通に生活が送れているからだと思います。ひと昔前に比べて、今は自己注射でコントロールが上手くいき、病院に行くことも少なくなりました。その分、情報を仕入れる機会が減っているので、今後本人が何か情報がほしい、気持ちを共有したいと思ったときに活用できるよう、子どもの代が大きくなったときに、鶴友会との橋渡しができればという気持ちで理事会へも参加しています。

山田さん:私は会長を拝命していますが、ふだん子どもに何もできていない父親代表です。横で見守っているだけのような人間が会長職であることで、かえってどなたも気楽に集っていただけるのではないかと思っています。例えば、初めてお子さんが血友病と診断された親御さんたちの衝撃や不安はよく分かりますが、私は「子どもの病気を知った日に、『選ばれし人間だ』と言って宝くじを買いに行きました」というような笑い話をします。そのくらい気持ちを楽にしていただきたいと願っています。

心地よく繫がり、さりげなく支えあう

会員になって良かったことは何ですか。

Yさん:何といっても、インターネットなどでは得られないような情報を、いち早く入手できることが患者会の魅力です。また、血友病患者さんが、血縁者に病気のことを、いつ、どのように告げるか、また理解していただくかというデリケートで難しい課題について、自然に学べるかたちがとれるのもメリットだと思います。例えば、患者会に姉妹として参加されている方は、同じ境遇の子どもたちと一緒に過ごすなかで仲間意識が芽生え、保因者であるとはどういうことかを肌感覚で学習されているようです。

Iさん:子どもが小学校に入学する時のことです。血友病のことを学校の先生に話しましたが、どのように対応すればいいのか困っているようでした。そのことを専門医の先生にご相談すると、「一緒に来院してください」と言われて、学校の先生方とともに行きましたら、普通の生活ができることをきちんと説明してくださり、学校の先生方も納得されました。こんなふうに、とても親身に対応してくださる専門医の先生と身近に接する場があることは、会員にとって大きなメリットだと思います。

患者会に期待していることは何ですか。

Oさん:私自身は、年齢を重ねることで生じた不安があって患者会に戻ってきましたので、同世代で情報を共有したり、年上の先輩方からアドバイスをいただいたりしたいですね。私からも、若い世代にアドバイスできることがあるのではと考えています。 コロナ禍の前に、「親父会」と称してお父さん同士、男性患者さん同士で飲み会をしましたが、こういうフランクな交流の機会はこれからも続けてほしいと思います。

Yさん:治療の進歩により、有難いことに患者会の必要性に気付きにくくなっていますが、それでも伝えたいことがありますし、皮下注射のことなど、逆にこちらが学べることがまだまだあると思います。

さまざまな形で思いや集いを引き継ぎたい

鶴友会のメンバーとして、お一人ずつメッセージをお願いします。

Yさん:理事としては、若い世代にどういう切り口でアピールするのかも考えています。夏合宿、バーベキュー大会、見学ツアーなど、患者さんも家族も、皆が楽しく過ごせるような企画を考えていきたいです。

Oさん:これからさまざまなライフイベントを迎える方々は、例えば自宅から離れて大学に通う場合に不安に思ったり、事故などに備えて注意しておいたほうがいいことがあったりします。また私は結婚のときに相手の親御さんの反対を経験しました。そういう人生の各段階に応じた戸惑いが出てきたときに、世代を越えてお互いに語り合ったり、自分の経験を話したりできる場でありたいと思います。

Iさん:半日交流会はもちろん、先ほどの話にもあった「親父会」のように、同じ立場の方々とざっくばらんに交流できる貴重な機会も設けていきたいと思っています。ぜひ、多くの方に参加いただきたいですね。

山田さん:やはり希少疾患であるがゆえに、対外交渉等には患者会などの存在があると心強いはずです。先人たちの努力により得た権利を守りつつ、新規患者さんたちの不安を緩和するような相談窓口的な立ち位置でありたいと思っています。
大切なことは、肩ひじ張らず、ゆるく、楽しく集える会として継続することです。若い世代への橋渡しは、私たちの大きな役割でもありますし、親御さんたちにも、ご協力をお願いしていきたいと思っています。

お話をうかがった方

会長 山田さん

血友病B(重症)患者(20代)の父親。情報を得るための手段として鶴友会に入会し、2009年4月から会長に就任した。

副会長 Iさん

血友病A(重症)患者(10代)の父親。10数年前に鶴友会のメンバーになり、現在は副会長を務めている。

理事 Oさん

血友病A(重症)。50代。鶴友会には幼少の頃に入会。5年ほど前にサラリーマンから自営に転身したのを契機に会合に参加するようになり、理事に就任した。

理事 Yさん

血友病A(重症)。30代。幼少の頃から鶴友会の会員だったが、参加はせず、周囲にも病気のことを隠していた。しかし、全国ヘモフィリアフォーラムへの参加が転機となり、2009年に理事に就任した。

鶴友会(かくゆうかい)

【創 立】
1967年
【代 表】
山田英史
【会員数】
92名(82家族)
【所在地】
愛知県名古屋市守⼭区町北13-2 つよみせいビル 鶴友会事務所
【WEB】
https://kakuyu-kai.amebaownd.com/ (外部サイトに移動します)
【連絡先】
TEL:052-445-5877(会長自宅)
Mail:yyhh1622@gmail.com
【活動内容】
主に愛知県内の⾎友病患者とその保護者により構成される友の会です。会員が互いに協⼒して助け合い、医療対策を推進し、かつ社会に広く訴え、患者と家族を守るための活動をしていくことを⽬的とし、年1回の総会と年1回の交流会を開催しています。また、会報の発⾏(現在は休刊中)、⾎友病関連資料の翻訳・配布を⾏っています。
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