血友病と止血の仕組み
血友病とは、出血を止めるために必要な「血液凝固因子」とよばれるたんぱく質が不足し血が止まりにくくなる病気です。
私たちのからだには、出血するとすみやかに血を止める仕組みがそなわっており、出血すると「血管」「血小板」「血液凝固因子」の3つの要素が次々と連携して止血をします。
出血すると、まず、「血管」が縮んで血液が外に流れ出るのを防ぎます(❶)。
次に、「血小板」が血管の破れた部分をふさぎ、「血小板血栓」とよばれる塊をつくり、栓をします(❷)。
最後に、「血液凝固因子」が連動しフィブリンとよばれるたんぱく質をつくります。フィブリンは血小板血栓をさらに強固なものにする役割を果たし、血栓がより頑丈なものになり止血が完了します(❸)。
血液凝固因子は12種類ありますが、その中で血液凝固第VIII 因子が不足しているものを「血友病A」、第IX因子が不足しているものを「血友病B」とよびます。
後天的に発症する「後天性血友病」
血友病には「血液凝固因子」の遺伝子に先天的な異常を認める「先天性血友病」と後天的に発症する「後天性血友病」があります。
後天性血友病では、本来はからだを守る仕組みである「免疫」が体内の血液凝固因子を異物とみなし、異物を取り除くたんぱく質である「インヒビター(抗体)」がつくられます。このインヒビターが、血液凝固因子の働きを阻害するため、血が止まりにくくなります。
なお、後天性血友病の多くは、血液凝固第VIII 因子の働きが阻害される「後天性血友病A 」です。
後天性血友病は、1年間に100万人あたり1.5 人※の割合で起こると報告されており、自己免疫疾患や悪性腫瘍(がん)などの持病のある方もいますが、持病のない方もいます。
また、後天性血友病は性別に関係なく発症し、発症率に男女差はみられません。発症年齢には20 ~ 30 代の出産後の女性と60 ~ 70 代に2 つのピークがあります。
なお、後天性血友病では第VIII因子の遺伝子に異常はないため、先天性血友病のように遺伝することはありません。
※後天性血友病A 診療ガイドライン作成委員会:
後天性血友病A 診療ガイドライン2017 年改訂版, 血栓止血誌2017; 28(6): 715-747.