後天性血友病って何?

2022.06.20

監修

新潟大学地域医療教育センター魚沼基幹病院 血液内科 教授 関 義信 先生

血友病と止血の仕組み

血友病とは、出血を止めるために必要な「血液凝固因子」とよばれるたんぱく質が不足し血が止まりにくくなる病気です。

私たちのからだには、出血するとすみやかに血を止める仕組みがそなわっており、出血すると「血管」「血小板」「血液凝固因子」の3つの要素が次々と連携して止血をします。 

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図:血友病と止血の仕組み

出血すると、まず、「血管」が縮んで血液が外に流れ出るのを防ぎます(❶)。
次に、「血小板」が血管の破れた部分をふさぎ、「血小板血栓」とよばれる塊をつくり、栓をします(❷)。
最後に、「血液凝固因子」が連動しフィブリンとよばれるたんぱく質をつくります。フィブリンは血小板血栓をさらに強固なものにする役割を果たし、血栓がより頑丈なものになり止血が完了します(❸)。

血液凝固因子は12種類ありますが、その中で血液凝固第VIII 因子が不足しているものを「血友病A」、第IX因子が不足しているものを「血友病B」とよびます。

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図:血友病と止血の仕組み血友病と止血の仕組み

止血の仕組みには全て血液凝固因子が関わっています
このうち1つでも因子が不足すると、この流れが止まってしまい、血が止まりにくくなります

後天的に発症する「後天性血友病」

血友病には「血液凝固因子」の遺伝子に先天的な異常を認める「先天性血友病」と後天的に発症する「後天性血友病」があります。

後天性血友病では、本来はからだを守る仕組みである「免疫」が体内の血液凝固因子を異物とみなし、異物を取り除くたんぱく質である「インヒビター(抗体)」がつくられます。このインヒビターが、血液凝固因子の働きを阻害するため、血が止まりにくくなります。 

なお、後天性血友病の多くは、血液凝固第VIII 因子の働きが阻害される「後天性血友病A 」です。

後天性血友病は、1年間に100万人あたり1.5 人の割合で起こると報告されており、自己免疫疾患や悪性腫瘍(がん)などの持病のある方もいますが、持病のない方もいます。

また、後天性血友病は性別に関係なく発症し、発症率に男女差はみられません。発症年齢には20 ~ 30 代の出産後の女性と60 ~ 70 代に2 つのピークがあります。

なお、後天性血友病では第VIII因子の遺伝子に異常はないため、先天性血友病のように遺伝することはありません。

※後天性血友病A 診療ガイドライン作成委員会:
後天性血友病A 診療ガイドライン2017 年改訂版, 血栓止血誌2017; 28(6): 715-747.

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図:後天的に発症する「後天性血友病」

インヒビターによって血液凝固因子がうまく働かなくなります

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<用語解説>
後天性血友病:
体内に存在している血液凝固因子を異物とみなし、排除しようとする自己抗体によって、血液凝固因子の働きが悪くなり突然止血できない状態になる疾患。年間100万人に1.5人の割合で発症するといわれており、免疫機構の異常が関連していると考えられているが詳細はわかっていない。
<用語解説>
血小板:
赤血球や白血球と同様に、血液中に存在する成分の1つ。けがや傷による出血を止める際に重要な役割を果たしてくれる血球のこと。