血友病患者の40.4%が出血も関節痛もあると回答
- [出典]
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厚生労働省行政推進調査事業「非加熱血液凝固因子製剤による
HIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究」
分担研究「血友病患者のQOLに関する研究」令和2年度調査報告書より
- [全体監修]
- 敦賀医療センター リハビリテーション科医長 竹谷 英之 先生
- [部分監修]
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奈良県立医科大学 人工関節・骨軟骨再生医学講座 講師 稲垣 有佐 先生
奈良県立医科大学 整形外科教室 教授 田中 康仁 先生
ABOUT
血友病性関節症とは?
血友病の特徴的な出血症状のひとつである関節内出血を繰り返すことで引き起こされる関節の障害です。
小さい時から出血を予防する治療を行っていても、自覚がないままに血友病性関節症が進行していることがあります。
特に足関節や肘(ひじ)関節、膝(ひざ)関節が関節内出血を起こしやすい部位です。
関節内出血が繰り返し起こると、関節内に炎症が生じ、痛みや腫れの原因となります。この状態が慢性化してしまうと、関節軟骨が破壊され、骨が変形し、強い痛みで関節を動かしづらくなることもあります。
- [部分監修]
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奈良県立医科大学 人工関節・骨軟骨再生医学講座 講師 稲垣 有佐 先生
奈良県立医科大学 整形外科教室 教授 田中 康仁 先生
MECHANISM
どのように血友病性関節症が起きるのか?
関節内出血が起きると、血液自体が、関節軟骨へ悪影響を及ぼします。さらに関節の周囲を取り囲んでいる滑膜(かつまく)が関節内の血液を取り除くために、増殖と炎症を起こし、関節の痛みや腫れの原因となります。
滑膜の炎症状態が続いてしまうと、クッションの役割を担っている関節軟骨が破壊され、骨が変形し、激しい痛みを引き起こします。
また、滑膜の増殖と炎症によってその部位に細い血管が形成され、さらに出血しやすくなるため、関節内の環境が悪化していきます。
- [部分監修]
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奈良県立医科大学 人工関節・骨軟骨再生医学講座 講師 稲垣 有佐 先生
奈良県立医科大学 整形外科教室 教授 田中 康仁 先生
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SURVEY DATA
数字で見る血友病性関節症
血友病患者さんを対象としたQOL(生活の質)に関する調査
30代以降は、半数以上の血友病の方が関節の満足度が低いと答えています。
血友病患者さんに対するアンケート調査において、関節の痛みを感じる患者さんの割合は年齢とともに増える傾向が見られ※1、また関節の満足度は年齢とともに低下する傾向が見られました※2。
※1 6ヶ月以内に関節に痛みがあった患者さんの割合(年代別)
※2 関節症の状態に関する満足度のグラフ
足関節の痛みについて、
ここ6ヵ月で痛みがあった人の割合は20代で 30% を超え、30代で47%でした。
関節内の年間出血回数は平均 2.47回(最多48回、最小0回)でした。部位別に出血が多かったのは右足首、左足首、右肘(ひじ)、左肘(ひじ)、左膝(ひざ)、右膝(ひざ)の順です。
出血と関節痛の関係について、
- ■ 疼痛も関節痛もない:29.3%
- ■ 出血はあるが関節痛はない:6.1%
- ■ 出血はないが関節痛はある:24.2%
- ■ 出血も関節痛もある:40.4%
ここ6ヵ月で2回以上の関節内出血がみられた人は
18~40歳で 約30% 、40~60歳で 40%超 でした。
将来に対して不安に感じることは、
「身体的に不自由になる」が 50% を超え、
「医療費が有償化される」「経済的に困窮する」「自分の介護」
「自己治療ができなくなる」「親の介護」が 30% を超えています。
「不安に感じることはない」と回答した方は 20% にも届かない結果。
補足情報
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回答者の中で20代~40代の方が 41.7%
を占めていました。
年代は、20代が 37人(9.3%)、30代が
47人(11.9%)、40代が 81人(20.5%)。 - タイプ別では、血友病 A が 341人(86.1%)、血友病 B が 55人(13.9%)でした。
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83.3% の患者さんが「定期補充療法」を
受けておられました。
主たる使用方法は、定期補充療法が 330人、出血時使用が 48人、予備的補充療法が 17人、無回答が 1人。
- [出典]
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厚生労働省行政推進調査事業「非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究」分担研究
「血友病患者のQOLに関する研究」令和2年度調査報告書より
対象:血友病患者
調査方法:インターネット上でアンケート形式により実施
アンケートの回収期間:2020年4月11日から2020年9月末
解析対象:期間中に回答のあった 431件のうち、検討対象として不適格と判断した35件を除いた396件を調査対象とし解析
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SELF CHECK
IMPACT TO DAILY LIFE
血友病性関節症の生活への影響
血友病性関節症によって関節に痛みがでてくると、関節の部位によって日常生活にこのような影響が出ることがあります。
肘(ひじ)関節
- 箸、茶碗で食事をする
- 歯を磨く
- 両手で洗顔する
- 第一ボタンの脱着
- 上着の着替え
膝(ひざ)関節
- 徒歩(杖なしで歩く)
- 階段の昇り降り
- 床への着座、しゃがむ
足関節
- 足先の身支度(靴下の着脱、足の爪切り)
- 床からの起立
- トイレの使用
- 浴槽への出入り
PREVENTION
血友病性関節症を予防するために
自分では分からない関節の状態を確認するために専門医による定期的(少なくとも年に1回)なチェックが欠かせません。
普段の出血予防管理をしっかりと行い、関節内出血が起きたらすぐに止血製剤を投与することが血友病性関節症を防ぐための第一歩です。
また、医師と相談の上、運動をして筋肉をつけて関節の負担を減らすことも有効です。
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