血友病の症状

2019.11.25

監修

荻窪病院 血液凝固科 部長 鈴木 隆史 先生

荻窪病院 血液凝固科 長尾 梓 先生

⾎友病の症状

⾎友病の⽅は、⾎が⽌まりにくい体質のため、出⾎に伴ってさまざまな症状があらわれます。症状は、出⾎する場所や程度により異なりますが、特に体の中で起こる⽬に⾒えない出⾎、いわゆる「内出⾎」が多いことが特徴です。内出⾎が起こると、⾎液が溜まった⾎のかたまり(⾎腫)が体の中にでき、時に周りの神経や⾎管を圧迫し、痛みや障害を引き起こします。 特に肘、膝や⾜⾸などの関節内、筋⾁内は出⾎しやすく、出⾎すると熱をもって腫れ、強い痛みをもつことがあります。また、同じ関節で出⾎が繰り返されると関節が変形して曲げ伸ばしがしにくくなり、関節を動かす際に痛みを伴うようになるため、⽇常⽣活に⽀障をきたすことがあります。血友病性関節症って何?
また、頭部の打撲などにより頭蓋内(ずがいない)出⾎を起こすと、場合によっては命の危険を伴うこともあるため、転びやすい⼩さなお⼦さんでは注意が必要です。
成⻑に伴う活動の変化から、出⾎が起こりやすい部位は年齢とともに変化します。

主な出血の種類と好発年齢
グラフ:主な出血の種類と好発年齢

日笠聡:Medical Practice 31(1): 68-72, 2014.

特に注意が必要な出⾎:頭蓋内出⾎

頭蓋内出⾎は⽣命にかかわる重⼤な出⾎です。転んで頭を打った時に起こることも多いですが、半数以上は原因なく突然起こっていると報告されています。特に乳児期では突然起こるため発⾒が遅れることがあり注意が必要です。また、頭蓋内出⾎を⼀度経験した方は再発しやすいとも報告されています。
頭蓋内出⾎が起こると、嘔気・嘔吐、頭痛、けいれん、傾眠傾向(眠くなる・ぼーっとする)などの症状があらわれますが、乳幼児では、不機嫌、発熱、元気がないなどの⾵邪のような症状があらわれます。このような症状に気づいたら迅速な対応が必要です。

⾎友病の慢性症状

⾎友病の症状が進⾏し、出⾎を繰り返すと関節症などの症状があらわれることがあります。⼀度出⾎を起こした関節では、出⾎を繰り返しやすくなります。同じ関節で出⾎が繰り返されると、関節の内側にある滑膜という部分に炎症が起こります。滑膜の炎症が慢性的に続くと、関節の動きが悪くなったり、動かなくなるといった⾎友病性関節症が引き起こされます。 血友病性関節症って何?
最近では⾎友病の⽅の関節内出⾎を予防するために乳幼児期から定期的に⾎液凝固因⼦を補充する⽅法が⼀般的に⾏われています。 定期補充療法

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<用語解説>
後天性血友病:
体内に存在している血液凝固因子を異物とみなし、排除しようとする自己抗体によって、血液凝固因子の働きが悪くなり突然止血できない状態になる疾患。年間100万人に1.5人の割合で発症するといわれており、免疫機構の異常が関連していると考えられているが詳細はわかっていない。
<用語解説>
血小板:
赤血球や白血球と同様に、血液中に存在する成分の1つ。けがや傷による出血を止める際に重要な役割を果たしてくれる血球のこと。