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正しい靴の選び方第4回
大人の靴の選び方

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正しい靴の選び方
-第4回 大人の靴の選び方-

2019.02.15

  • 監修:
    特定非営利活動法人(NPO)
    オーソティックスソサエティー 理事長
    整形外科医
    内田俊彦先生

男性編

“大きくてゆるめの靴”が、足や全身の不調の原因になっていることもあります。
いつも履いている靴の状態を確認してみましょう。

「最近、どうも疲れやすい」「膝が痛い」「腰痛や肩こりがひどい」と感じたら、一度、ご自身がいつも履いている靴をチェックしてみてください。靴底の減り方は左右で均等でしょうか? 履き口は変形していませんか?中敷きに大きくすり減っているところはありませんか?【図1】。

本来、靴は足にぴったり合ってさえいれば、それほど大きく型崩れはしないものです。このため、変形していたり、ある特定の部分だけが極端に摩耗したりしているのは、“足にぴったり合っていない靴”である可能性が高いです。

一般に男性が靴を選ぶ時、「脱いだり履いたりしやすい」「締め付けられるような感覚が嫌い」といった理由で、多くの方は大きくてゆるめのものを求めがちです。しかし、そうした大きすぎる靴では足をしっかりとホールドできないために、靴の中で足が前滑りしてしまったり、歩行の際に横揺れを起こしてぐらついたりしてしまうのです。

前滑りや横揺れが繰り返されると、靴の履き口がだんだん広がっていきます。すると、さらに足が不安定になり、無理に踏ん張ろうとしたり、あるいは靴が脱げないよう無駄な動きをしたりするために足関節や膝関節に負担がかかって、痛みが出やすくなります。また、全身のバランスも崩れ、重心に偏りが出て歩行の際の足の運びにもねじれが生じます。これが靴底の片減りの原因のひとつです。さらに、歩行が不安定になると、下半身のみならず上半身にも余計な力が入ってしまいます。このため、疲れやすくなったり、腰痛や肩こりといった全身の不調が起きたりする可能性があります。つまり、合わない靴を履いていることが引き金になって、まるでドミノ倒しのように足関節から膝関節、そして腰から肩へと不調がどんどん広がるかもしれないのです。

こうした足に合わない靴が引き起こす不調ドミノを止めるには、靴底が片減りしたり、履き口が大きく変形したりした靴をいつまでも履き続けないことが肝心です。「履き慣れているから」などといって、そうした靴を漫然と履き続けていると、関節や全身にさらなる悪影響をおよぼすことがあります。なるべく早く、足にぴったり合った靴に履き替えるようにしましょう。

図1 靴の変形とその原因

靴のしわの入り方が左右で異なっている。
これは右方向に傾いて歩いている方に多い。

両足とも外側の靴底がすり減っている。
これは歩行の際に、足が外側に傾きながら動いている方に多い。

その他の靴や中敷きの変形からみた足の不具合についてはこちらから

“足にぴったり合った靴”を選び、靴紐や中敷き、インソールで調整しましょう。

では、“足にぴったり合う靴”とは、どのような靴でしょうか? “足にぴったり合う”と聞くと、“きつい靴”や“窮屈な靴”を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、そうではありません。足にぴったり合う靴とは、①甲の部分を紐で締めてしっかりホールドすることができ、②踵(かかと)部分にはある程度の硬さがあって踵の収まりがよく、③靴底は足指の関節部分で曲がり、④中には衝撃を吸収でき、取り外し可能な中敷きが入っていて、⑤靴底がぐにゃっと曲がらないように“シャンク”と呼ばれる芯(補強材)が入っている、⑥つま先部分には1cm程度の捨て寸があって足指の動きを妨げないものです。正しい靴選びのためのチェックポイントを示しますので、参考にしてください【図2】。

靴の専門家は、専用の測定機器を用いて足のサイズ(足長)やワイズ(足囲)を正確に測定し、合わせて歩き方の癖やバランス、足の硬さや足裏の状態、そして普段履いている靴裏の摩耗状態などを調べて医学的根拠に基づいて分析し、適切な靴を選んでくれます。

図2 足にぴったり合う靴のチェックポイント

また、足はアーチ構造になっていますが、年齢を重ねるごとに足の筋力が落ち、靭帯もゆるんでアーチ構造がへたって変形してきます。このため、40代ぐらいになれば、一度、資格を持ったシューフィッターやフットケアトレーナーなどに靴選びを相談するとよいでしょう。

さらに、靴を新調しても1~2ヵ月という短い期間で靴底が片減りしたり、履き口が大きく変形したりするような方では、靴のみならず、全身の歪みやバランスを整えて歩き方の癖を直す専用の中敷き(インソール)【図3】が必要なこともあります。こうしたインソールは、基本的にオーダーメイドになるので、靴の専門家がいるところで相談し、作製するようにしましょう【フットケアトレーナー在籍施設一覧】。インソールを入れてバランスを調整し、その状態を維持できれば身体のアンバランスも次第に整えられてきます。

なお、これまでゆったりとした靴を履き慣れてきた方が、足にぴったり合った靴を履くと、最初のうちは少し窮屈に感じるかもしれません。しかし、革製のビジネスシューズであれば履いているうちに徐々に革が伸びてきます。また、ビジネスシューズの多くは甲の部分が紐で調整でき、中敷きも取り替えられるようになっています。まずはサイズやワイズを足にぴったり合わせたうえで、靴紐や中敷き、インソールで調整するとよいでしょう。「しっくりこないから」といって、すぐに靴のサイズアップをするのはお勧めできません。

ウオーキングシューズやゴルフシューズなども基本的にはビジネスシューズの選び方と同じです。しかし、日本のスポーツメーカーの靴は多くがワイドタイプのものであることに注意が必要です。

また、足に合った靴を選んでも、それを正しく履けなければ意味がありません。必ずイスに腰かけて靴ベラを使って足を靴に入れ、地面に踵(かかと)をつけた状態でつま先を上げ、紐を結ぶのが正しい靴の履き方です【図4】。靴の専門家が、足にぴったり合った靴を選ぶ手順をご紹介します【図5】。

図3 オーダーメイドの中敷き(インソール)の一例

※ワイズ(足囲):親指と小指の付け根あたり、左右の足幅が最も長いボールジョイントと呼ばれるポイントでぐるりと一周した長さのこと。 英語では、「Ball girth(ボールガース)」と称されるが、日本ではこれを幅(width)と捉えて「ウィズ」、もしくは「ワイズ」と 呼ばれることが多いので、ここでもワイズ(足囲)と表記する。

★フットケアトレーナー:足の構造や機能、またトラブルにも精通する数々の知識(講習会に参加等)と実践を積み、
認定テストに合格したNPO法人オーソティックスソサエティーの会員。

図4 正しい靴の履き方

    1. ① イスに腰かける
    2. ② 靴紐をほどき、履き口を大きく開いて、靴ベラを使って足を入れる
    3. ③ 踵(かかと)を地面につけ、つま先を上げて靴の踵部分を
      しっかり合わせる
    4. ④ つま先を上げた状態のまま靴紐をしっかり縛る

図5 足にぴったり合った靴を選ぶ手順

1. 情報収集(ヒアリング)

今履いている靴の状態を調べたり、問診をしたりして正しい靴選びのための情報を収集します。

2. 足のサイズ計測

体重がかかっていない(非荷重)時と、体重がかかっている(荷重)時の足の大きさをフットゲージとメジャーを用いて計測します。

3. フットプリント採取

フットプリントを採取して両足の体重のかかり方に差がないか、足裏に問題がないかを確認します。

4. 理想とする靴サイズの見極め

足のサイズ計測での数値から理想とする靴のサイズ・ワイズを予測し、試し履きをします。なお、靴を履く時には、靴ベラを使います。

5. 静止立位姿勢の観察

静止状態での肩や腰の傾きをチェックし、全身のバランスを観察します。

血友病の方の靴選びは、基本的には血友病でない方の靴選びと同じです。
靭帯を痛めている方は簡単なマッサージでケアしましょう。

血友病の方の場合の靴選びは、基本的に血友病でない方の場合と同じです。ただ、血友病の方は関節の状態が個々で異なるので、どの靴がよいとは一概にはいえません。しかし、たとえば足関節に不安がある方では、衝撃をより吸収しやすい厚めの中敷きを入れたり、ハイカットシューズを履いたりして足関節を保護するような工夫をするとよいでしょう。心配なことがあれば、主治医や主治医と医療連携している整形外科医、あるいは靴の専門家であるフットケアトレーナーに相談するようにしてください。

実は、足に合わない靴を履き続けていると、足がしっかりと安定しないので、知らないうちに捻挫を繰り返し、いつの間にか靭帯を痛めていることも多いのです。そこで、足の靭帯が伸びていないかを簡単に確認する方法をご紹介します。まずイスに座って両足を伸ばします。次に、円を描くように足を回したり、上げ下げしたりしてみます【図6】。足関節を動かせる範囲(可動域)が極端に狭かったり、左右差が大きかったりすれば、靭帯を痛めている可能性があります。

図6 靭帯の自己チェック

靭帯が伸びていると、歩行の際にそれを筋肉の動きで補おうとするために、足が疲れやすくなります。このため、一日の終わりには、足をケアするようにしましょう。具体的には、ゴムボールや食品用ラップフィルムの芯を潰して柔らかくしたものを土踏まずの部分に敷き、その上に約3分間立つとよいでしょう【図7】。こうすると、前脛骨筋・後脛骨筋・長腓骨筋といった足を動かすための重要な筋肉の終点が集まっている土踏まずの部分がほぐれて、足底全体の筋肉がゆるむのです。なお、この時に、青竹踏みのように足踏みをする必要はありません。また、土踏まずの下に敷くものは、軽く湾曲しているものにし、痛みを感じたらすぐに休止しましょう。

足は身体の土台です。足にぴったり合った靴を選んだり、一日の終わりにこうした簡単なマッサージをしたりしてケアするように努めましょう。

図7 足の疲れをとる土踏まずのケア

女性編

足のつま先の形によって、選ぶべき靴の形が異なります。

多くの女性が、「私の足に合う靴がない」「外反母趾で、どんな靴を履いても足が当たって痛くなってしまう」と悩んでいます。実は、それらの悩みの多くは、自分の足のサイズやワイズをきちんと測ったり、足の形の特徴をきちんと把握していなかったりすることに原因があると考えます。

足は体重がかかると、その重みで形が変わり、サイズ・ワイズ・足幅が変化します。実は、13〜90歳までの女性3,540名の足を計測したデータによると、体重がかかっている時(荷重時)と、かかっていない時(非荷重時)のワイズには、平均で16mmの差がありました1)

靴の幅はE、2Eなどと表示されますが、この16mmの差とはEと3Eの差に相当します。したがって荷重時のワイズで靴を選んでしまうと、2まわりも大きい靴を履くことになってしまうのです。このため、必ず荷重時と非荷重時、両方での足の大きさを測定してその差を割り出すようにしてください。差が大きい方は、非荷重時のワイズを基に靴を選ぶとフィット感が得られ、歩行が安定します。

また、足のつま先の形は、エジプト型(親指が一番長いタイプ)、ギリシャ型(足の人さし指が一番長いタイプ)、スクエア型(指の長さがほとんど同じタイプ)、の3タイプに大きく分かれます。それぞれの形に合わせて、オブリーク型(親指を頂点に小指にいくにしたがって短くなるカーブを描く)、ラウンド型(人さし指もしくは中指を頂点に対称的なカーブを描く)、フレンチ型(指の長さが変わらず、四角い形になっている)、を選ばなければ、つま先部分が靴の中で変形し、外反母趾などを“作ってしまう”こともあるのです【図8】。ご自身のつま先と今、履いている靴の形が合っているかを調べてみましょう。

なお、外反母趾になってしまったら、足が靴の中で前滑りしないように、ヒールがなるべく低く、足の甲の部分をしっかりホールドする紐やベルトがついた靴がお勧めです。また、オーダーメイドの中敷き(インソール)を入れると、全身の歪みやバランスが整えられ、外反母趾の方がなりやすいとされる変形性膝関節症を予防することもできます。一度、資格を持ったシューフィッターやフットケアトレーナーなどの靴の専門家に靴選びを相談するとよいでしょう【フットケアトレーナー在籍施設一覧】。

1)内田俊彦:靴の医学 23(2) 99-104, 2009

図8 つま先と靴の形状との対応

Profile

  • 特定非営利活動法人(NPO) オーソティックスソサエティー 理事長 整形外科医
    内田俊彦先生 プロフィール

    1977年に昭和大学医学部を卒業。昭和大学藤が丘病院整形外科、神奈川県立子ども医療センター、船橋渡辺整形外科病院を経て、2002年にNPOオーソティックスソサエティー(医師・理学療法士・柔道整復師・鍼灸師等の医療従事者と靴業界で結成された足と靴の専門家集団)の理事長に就任。現在は、東京都に足と靴の治療モデル店で、足と靴の専門家として整形外科医の立場から子どもから高齢者までの靴選びや、フットケアトレーナーの育成に従事。子どもの“足育”にも力を入れている。

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