LIFE

こんな部屋にしてみませんか?
~美防災~⑤

  • LINE
  • facebook
  • Twitter

-第5回-室内採光の考え方

2018.12.27

建物の構造強度や耐震性を保ちつつ、室内に自然光を多く採り込めるように
窓の大きさや設置位置を工夫してみましょう。

監修:株式会社 町田ひろ子アカデミー一級建築士・インテリアコーディネーター
町田瑞穂ドロテア 先生

災害時には、電気の供給が止まって照明がつかないことも多いので、屋外の自然光を窓から採り入れて明かりを確保する“室内採光”がとても重要になります。

では、「自然光を多く採り入れるために、窓や出入口などの開口部を大きくしておけばいいのね」と思われるかもしれませんが、そうではありません。なぜなら、開口部を大きく設けると、建物自体の構造強度が保てなくなるのです。

地震大国である日本では、建物の構造強度や耐震性が非常に重視されます。これまでもマンションは構造上、窓の数が限られる建物が多かったのですが、近年では戸建てにおいても耐震性を高めるために、大きなガラス窓の数はできるだけ少なくし、採光を工夫して室内を明るくする方法が検討されるようになりました。

その具体的な方法としては、①大きなガラス窓の代わりに天窓やスリット窓、高窓・地窓を設ける、②居室と居室の間にある壁の一部を取り払って“室内窓”に置き換える、③光を反射する鏡や壁紙を用いる、などがあります。これらの詳細を順にご紹介します。

①大きなガラス窓の代わりに天窓やスリット窓、高窓・地窓を設ける

確かに屋外に面した大きな窓からは自然光を採り込むことはできますが、住宅密集地や道路に面した場所では、プライバシーや防犯の観点から、カーテンは閉めっぱなしにしているというお宅もあるのではないでしょうか。そうした場合、リフォームや建て替えの際には大きな窓の代わりに天窓やスリット窓、高窓・地窓を設けることを検討してみるのも一つです【図1】。
天窓は、屋根や屋上に設置する窓で、トップライトとも呼ばれます。同じ大きさの場合、壁に設置した窓よりもトップライトにしたほうが3倍近くの採光量を得ることができるとされます。
スリット窓や高窓・地窓は、屋外にいる人と視線が合いづらいので、採光を確保しつつ、プライバシーも保てるという利点があります。

【図1 室内採光の工夫】

  • 天窓

  • スリット窓

  • 高窓

  • 地窓

②居室と居室の間にある壁の一部を取り払って“室内窓”に置き換える

  • “室内窓”とは、間仕切りの壁につける窓のことで、壁全体を取り払うことなく、隣り合った2つの空間をつなげる役割を果たすものです【図2】。
    洗面所やキッチン、狭い廊下や玄関などのように、外壁に大きな窓を設置しにくい場所に室内窓を設置すると、隣接する部屋から光を採り入れられ、視覚的にも広く感じられるようになります。また、家族が互いの気配を感じ合ったり、会話をしたりするコミュニケーションの窓にもなります。

  • 【図2 室内窓】

③光を反射する鏡や壁紙を用いる

ヨーロッパでは石造りの家が多く、窓が小さいので、少ない光を拡散させて室内を明るくするために鏡が効果的に用いられてきました。同様に、窓の近くの壁に角度を調整した鏡を配すると、屈折反射した自然の光を室内の奥まで届けることができます。また、壁紙も光を反射する白いものにしたり、メタリックやラメが入ったものを用いたりすると明るくなり、部屋も広く感じられるようになります【図3】。

【図3 壁紙の工夫】

複数の照明器具を組み合わせて、リラックス空間を素敵に演出してみましょう。

住宅の照明は、①日常生活を安全に過ごし、防犯に役立てる、②勉強や調理などの作業に必要な明るさを確保する、ということを主な目的としていますが、それ以外に③光を演出し、部屋の雰囲気を高める、という役割もあります。

マンションに多いのは、1室につき天井にペンダントライト、もしくはシーリングライトを1台設置する1室1灯照明です。これだと高い位置から照らすため、部屋全体に一定の明るさを確保できるものの、光の陰影が生まれず、フラットな印象になってしまいます。

★ペンダントライト:コード(ケーブル)やチェーンなどで天井から吊るされた照明やその照明器具。高さは調整できるものが多い。
シャンデリアも含まれる。

★シーリングライト:天井に直に取り付ける照明器具で、天井に埋め込むタイプと天井面に取り付けるタイプがある。
室内全体を明るくする全体照明に適している。

日本の家は、どの部屋も煌々と明かりがついているというイメージがあります。もちろん、部屋に必要な明るさは空間ごとに異なります。勉強や調理をする場合には手元を明るく照らす必要がありますが、リビングでくつろぐ際にはほんのりとした間接照明のほうがリラックスできます。常に部屋を明るくしておくと電気代もかかるし、いざ停電になった時、周囲の暗さに目が慣れるまでに時間がかかるという問題もあります。

  • 一方、海外の住宅では、くつろぎの空間を演出するために、照明を落として部屋全体をやや暗くし、ブラケットライトという壁面に取り付けられるタイプの照明器具や、フロアライトという床に置く照明器具、さらには間接照明などを用いて光を分散させ、陰影をつけていることが多いのです【図4】。

    ★ブラケットライト:壁面に取り付けた壁付け用の照明で、
    室内に奥行きを感じさせる。
    補助的な照明としてほかの照明と
    組み合わせて使われることも多い。

    ★フロアライト:床に置かれるタイプの自立した照明器具で、
    高さのあるスタンド形式のものや、
    直接床面に置かれるものなどがある。
    演出効果は高い。

  • 【図4 ブラケットライト・フロアライトの設置例】

照明はインテリアの雰囲気を高めるために欠かせない要素です。日常生活に必要な明るさを確保した上で、光を美しく見せる工夫が必要です。部屋ごとの明るさの基準や光が持つ演出効果を知り、効果的な照明計画を考えてみましょう。

  • なお、地震が多い日本では、天井からの照明器具の落下、あるいは床置き照明の転倒などの懸念があることから、できれば照明器具は壁付けや埋め込みタイプのものにし、吊り下げる場合でも軽量素材のものを選ぶとよいでしょう【図5】。

  • 【図5 ミウラ折でできた軽いランプシェード】

美防災を実現できる、さまざまアイテムをうまく採り入れてみましょう。

“美防災”は、「防災」と「インテリア」を結びつけたコンセプトで、住まいの防災性を高めるとともに、生活空間に美しさと安全性・快適性を組み込んで、心豊かに暮らそうというライフスタイルの提案です。今回は、“窓”や“明かり”に関連した、美防災が実現できる、さまざまなアイテムをご紹介しましょう。

<防災に用いられるウィンドウトリートメント>

カーテンやブラインドなど、窓まわりのアイテム全般のことを“ウィンドウトリートメント”といいます。ウィンドウトリートメントは、日差しの調整やプライバシーの保護だけでなく、空間の印象にも大きく影響します。また、美防災の観点からはカーテンが1枚あるだけで、地震などで窓ガラスが割れた際に、ガラス片が室内に飛び散るのを最小限に防いでくれるという効果もあります。

  • さらに、ガラスが割れた時の飛び散りを防いでくれる飛散防止フィルムも、最近は透明のものだけでなく、さまざまなデザインのものが市販されており、ウィンドウトリートメントのアイテムとしても使えます【図6】。ただ、ガラスの中に鉄線が入った網入りガラスや、ガラスが二重になって断熱性能が高いペアガラス、熱線反射ガラスは温度変化によってガラスが割れる“熱割れ”を起こす可能性もあるので、飛散防止フィルムを貼るのは避けてください。

    <アロマキャンドル>

    アロマキャンドルは、ろうそくとして停電対策に使えることはもちろんのこと、断水で水洗トイレが使用できず、バケツで水を流さなければいけない時につけておくと、消臭効果も得られます。また、避難生活ではストレスも溜まりやすいので、アロマで癒しの効果も期待できるかもしれません。ただし、火の取り扱いには十分に注意するようにしてください。

  • 【図6意匠性に富む飛散防止フィルムの一例】

<蓄光素材>

  • 蓄光素材とは、配線や電気設備を一切必要とせず、昼間の太陽光や蛍光灯の紫外線を吸収して、暗い所で数時間、発光し続ける素材のことです【図7】。

    蓄光素材には、塗料、テープ、石などさまざまな形状のものが開発されており、防災アイテムとしても用いられています。たとえば巾木や手すりに蓄光素材でできたテープを貼っておくと、停電時の避難経路のガイドになります。また、薬箱や懐中電灯など、すぐに持ち出しが必要なものにも蓄光テープを貼っておくと、暗闇でもすぐに探せる目印になるでしょう。

    ★巾木(はばき):床と壁が接する継ぎ目で、壁の一番下に
    取り付ける細長い横板。幅木とも書く。

  • 【図7 蓄光素材を用いた巾木の一例】

さらに蓄光素材でできた小石【図8】は、自然光下ではほぼ白色なので、フラワーテーブル【図9】の中に撒いておくと、インテリアの雰囲気を壊さない防災グッズとして使えます。

  • 【図8 蓄光素材でできた小石】

    • 自然光下
    • 暗所
  • 【図9 フラワーテーブル】

アロマキャンドルや蓄光素材でできた小石は、なければ暮らせないものではありませんが、私たちの日々の生活を豊かに美しく彩ってくれるアイテムです。そうした少し余分に見える小物が、非常時に役立つこともあるということを心にとどめておいていただきたいと思います。

Profile

  • 株式会社 町田ひろ子アカデミー 一級建築士・インテリアコーディネーター
    町田瑞穂ドロテア 先生 プロフィール

    スイス生まれ。東京都市大学(旧:武蔵工業大学)工学部建築学科卒業。日本の住宅メーカーをはじめ米国の設計事務所RTKL International ltd.に勤務。2000年の帰国後より「町田ひろ子アカデミー」にて教育・商品企画・インテリアデザインなどに関わる。校長の町田ひろ子は、40年前に「インテリアコーディネーター」を初めて提唱した。以来、「はじめに暮らしありき」の思想のもと、豊かな暮らしの実現のために、国内外からの情報を収集、一級建築士事務所と人材育成の両輪で日本の多様化するライフスタイルに対応した「暮らし」の提案に努めている。東日本大震災以降、災害に負けない豊かな住まいとインテリアとして、賢く「美防災」を推進。

TOP