美防災:-第1回-“美防災”とは?

2018.06.01

監修

株式会社町田ひろ子アカデミー 一級建築士・インテリアコーディネーター 町田 瑞穂ドロテア 先生

はじめに 〜監修医のコメント〜

日本は災害の多い国ですが、過去の震災の経験から、災害時への備えが教訓として残されています。
まず、どのような状況下でも医療や投薬を受けるための準備として、最も大事なのは、自分の病気と薬の名前、かかりつけの病院と医師の名前を伝えられることです。そのために、避難袋を用意して、健康保険証、医療券、患者カードのコピーを入れておきましょう。薬は一箇所ではなく、幾つかの場所に分散して保管しておきましょう。その際、室温保管の期限には注意が必要です。また、室温保管できない薬を使われている方は主治医に相談してみてください。

また、近接地域の医療機関情報も重要です。災害が広域である場合には遠い場所に避難することにもなるかもしれません。予め血友病の専門医療機関がどこにあるか情報を得ておきましょう。
さて、これからご紹介する“美防災”は、日々薄れていってしまう防災意識を取り戻していただくこと、またどうせ備えるなら楽しく美しくやろうということをコンセプトに、インテリアと災害対策を両立した部屋づくりについてご紹介します。

荻窪病院 血液凝固科 長尾 梓 先生 長尾 梓 先生

“美防災”とは、「防災」と「インテリア」を結びつけた新しいコンセプトです。
ライフスタイルや住まいの防災性を高めて、生活空間に美しさと安全性・快適性を組み込み、 心豊かな生活を実現しませんか。

地震大国と言われる日本では、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった大きな地震の直後は国民の防災意識は高まるものの、一時の恐怖心が過ぎるといつの間にか災害に対する危機意識が薄れていってしまうようです。“備えあれば憂いなし”であることは誰もが理解していますが、こと防災に関しては、『いつかはやらなくては』と思いつつ、一向に手がつけられないという方も多いのではないでしょうか。

このように、防災への意識はあるものの、なかなか実行に移せないのは、“防災”という言葉が持つハードで暗く響くイメージが影響しているのかもしれません。また、同様に“バリアフリー”という言葉も、本来は誰もが暮らしやすくなる仕様を指すにもかかわらず、障害者や高齢者だけを対象としたもの、とのイメージが定着してしまっているのは残念です。

また、防災用品と言えば、家具転倒防止の突っ張り棒などが思い浮かびますが、インテリア性に乏しいため、なかなか設置しづらいのではないでしょうか。さらに、非常用持ち出し袋も「リビングのイメージにそぐわないから」と押入れの奥にしまわれ、中の商品の賞味期限がいつの間にか切れてしまっていた、ということもよくあったと思います。

そこで、防災を負担なく楽しく気軽に始められないか、またインテリアの雰囲気を損なわず、日々の生活を豊かに彩ることができないかとの想いから町田ひろ子アカデミーでは“美防災”というコンセプトを提唱することにしました。

“美防災”は、「防災」と「インテリア」を結びつけた新しい概念で、住まいの防災性を高めるとともに、生活空間に美しさと安全性・快適性を組み込んで、心豊かに暮らそうというライフスタイルの提案です。

血友病のお子さんがいるご家庭では、出血リスクを少しでも回避するために家具の角にクッションをつけるなど安全面への配慮をされている場合もあると思います。その際、安全であると同時に、おしゃれで機能的なひと工夫をプラスすることで、日々の生活がより快適で心豊かなものになるのです。防災やバリアフリーといったことを意識しつつも、インテリアのイメージを損なわない工夫はたくさんあります。

この「美防災」の考え方に基づいた安心で安全、そして快適な暮らしの工夫の実例については、次回から順にご紹介して参ります。どうぞお楽しみに。

テーマ 内容
第2回 動線 安心・安全な生活に不可欠な快適動線の作り方について
第3回 収納 物が散らからない収納の工夫について
第4回 備蓄 パントリーでの“ローリングストック”について
第5回 光と窓 室内採光の考え方について
第6回 “マイコーナー”設置のススメ 個々の居場所“マイコーナー”設置のご提案

~美防災の実例のご紹介~

例1:パントリーシェルター(地上に設置)

“現代の蔵”をイメージして生まれた、室内設置型シェルター。
基礎に緊結した6面鋼製のボックス構造で、普段はローリングストックパントリーとして食品庫+ワインセラーの機能を果たし、災害時にはシェルターとして『人命』『備蓄』『情報』『財産』『非常用備蓄品』の場となる。
東日本大震災の経験から、都市災害を想定した防災備蓄の場として提案。

写真:パントリーシェルター

例2:美防災インテリア-1

吹き抜けに飾られたフラワーエレメントのペンダント照明は、大きいものでも1台1.5kgと軽量。震災では、照明器具の落下による二次災害が発生したことから、減災の視点からこうした軽量タイプの照明器具が生まれた。 自然光や低い照度でも十分な明るさと華やかさを演出する工夫として、室内に光を反射する素材を多用。天井には金属製のパネルタイルを、暖炉の上には窓からの光を反射する鏡を設置した。部屋全体を覆う壁紙には、光を反射することで表情が変わる光沢のある素材を選んだ。光の角度や時間帯でインテリアの見え方も変わり、鏡や壁付け照明を加えることでより明るさと華やかさも加わる。

写真:美防災インテリア-

例3:美防災インテリア-2

大型テレビを収納できる置き型家具。エレガントなデザインで安らぎのあるインテリアを演出しながら、両引き戸式の扉がテレビの飛び出しや転倒を防止する。
カーペットは、物が落下する時の衝撃を緩和し、「割れ・飛散」の防止に有効であるとともに、安全な通路の確保にもつながる。

写真:美防災インテリア-

Profile

写真:町田瑞穂ドロテア先生

株式会社 町田ひろ子アカデミー 一級建築士・インテリアコーディネーター
町田瑞穂ドロテア 先生 プロフィール

スイス生まれ。東京都市大学(旧:武蔵工業大学)工学部建築学科卒業。日本の住宅メーカーをはじめ米国の設計事務所RTKL International ltd.に勤務。2000年の帰国後より「町田ひろ子アカデミー」にて教育・商品企画・インテリアデザインなどに関わる。校長の町田ひろ子は、40年前に「インテリアコーディネーター」を初めて提唱した。以来、「はじめに暮らしありき」の思想のもと、豊かな暮らしの実現のために、国内外からの情報を収集、一級建築士事務所と人材育成の両輪で日本の多様化するライフスタイルに対応した「暮らし」の提案に努めている。東日本大震災以降、災害に負けない豊かな住まいとインテリアとして、賢く「美防災」を推進。

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