血友病とは
血友病の方は、出血を止めるために必要な「血液凝固因子」と呼ばれるたんぱく質が不足しているため、血が固まりにくい体質です。そのためけがや打撲などで一度出血をすると、血が止まるまでに時間がかかります。出血の止まりにくさの程度は、血友病の方それぞれで異なります。
血友病には「血液凝固因子」の遺伝子に先天的な異常を認める「先天性血友病」とそうでない 「後天性血友病」があり、本内容では主に「先天性血友病」の内容を中心に取り上げています。
止血するしくみ
通常、血液が流れる血管の中では血液が固まることはありませんが、出血が起こると、止血するためにさまざまな反応が起こります(止血機構の発動)。血管が切れたり破れたりして出血すると、「血管」 「血小板」「血液凝固因子」の3つの要素が次々と連携して止血に働きます。
- ① 「血管」が収縮して(縮んで)血液が外へ流れ出るのを防ぎます。
- ② 血液中の成分の1つである 「血小板」が傷口に集まり、「血小板血栓」とよばれる血小板の塊ができます。この血小板血栓が傷口に栓をすることで応急処置をします。これを一次止血といいます。
- ③つぎに血液中の「血液凝固因子」が連動しフィブリンというたんぱく質を作りだします。フィブリンは一次止血で得られた血小板血栓をさらに強固なものにする役割を果たし、血栓がより頑丈なものになり止血が完了します。これを二次止血といいます。
血友病には血友病Aと血友病Bの2種類があり、それぞれ不足している血液凝固因子が異なります。連動してフィブリンを作るために12種類の血液凝固因子が関わりますが、これらはいずれも止血に重要な役割を果たしています。
そのうち血液凝固第VIII(8)因子が不足しているのを血友病A、第IX(9)因子が不足しているのを血友病Bといいます。
血友病の治療では、これらの不足した血液凝固因子の補充によりしっかりとフィブリンが作られることで止血が得られます。血友病の治療・出血への対応
最近では治療薬の種類も増え、適切な止血治療により血友病の方も一般の方と変わらない社会生活を送ることができるようになり、平均寿命も一般の方と変わらなくなっていることが報告されています。
血友病の方の数
日本の厚生労働省の調査(血液凝固異常症全国調査)では、2018年5月31日時点で我が国の血友病Aの方は5301人(男性5255人、女性46人)、血友病Bの方は1156人(男性1134人、女性22人)と報告されています。
血友病の方は男性に多く、その頻度は出生男子1万人に1~2人といわれ、女性に発生することは極めてまれです。この理由として、血友病が遺伝性の病気であることが挙げられます。
⾎友病の重症度
⾎友病の重症度は、⾎液検査によりそれぞれの⾎液凝固因⼦活性がどの程度かによって重症型、中等症型、軽症型に分類されます。血液凝固因⼦活性は、⾎友病でない⽅を100%とした場合の値で⽰されます。血友病の検査
重症度(凝固因子活性) | 出⾎の状態 |
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重症 (1%未満) |
関節や筋⾁の自然出⾎が⾼い頻度でみられます |
中等症 (1%以上5%未満) |
⾃然出⾎は少なくなりますが、軽いけがなどで出⾎します |
軽症 (5%以上40%未満) |
⾃然出⾎はほとんどなく、抜歯・手術や外傷後の止血が困難となります |