血友病の遺伝形式

2019.11.25

監修

荻窪病院 血液凝固科 部長 鈴木 隆史 先生

荻窪病院 血液凝固科 長尾 梓 先生

⾎友病の遺伝形式

ヒトの遺伝⼦は23組46本の染⾊体として細胞の中に存在しており、⽗親と⺟親からそれぞれ23本ずつ受け継ぎます。そのうちの1組にヒトの性を決定する「性染⾊体(X,Y)」があります。ヒトの性はこのXとYの組み合わせで決まりますが、⼥性は⺟親・⽗親から1つずつX 染⾊体を受け継いで「XX」、男性は⺟親のX染⾊体と⽗親のY染⾊体を受け継いで「XY」という組み合わせになっています。
⾎液凝固因⼦の第VIII(8)因⼦と第IX(9)因⼦を作り出す遺伝⼦はX染⾊体上に存在します。⾎友病の⽅はこの遺伝⼦に変異があり、これらの⾎液凝固因⼦をうまく作ることができません。⺟親から遺伝⼦変異のあるX染⾊体(X’)を受け継いだ場合、⼥性は⽗親から受け継ぐX染⾊体があるため通常は⾎友病を発症しませんが、男性は⺟親からしかX染⾊体を受け継げないため⾎友病を発症します。これが、⾎友病が男性に多い理由です。

血友病患者が父親の場合
図:血友病患者が父親の場合
血友病保因者が母親の場合
図:血友病保因者が母親の場合

ただし、家系に⾎友病の⽅がいない場合でも、遺伝⼦の突然変異により⾎友病になる場合もあります。

⾎友病保因者

⾎友病ではないものの、遺伝的に⾎友病の素因を持つ⼥性を「保因者」といいます。⼥性はX染⾊体を両親から1つずつ受け継ぐため2つあります(XX)。そのうちの1つのX染色体に⾎友病の原因となる遺伝⼦変異があったとしても特徴が現れにくく、⾎友病と診断されることはまれです。
⾎友病保因者は、基本的に⽇常⽣活に⽀障がないことがほとんどですが、保因者でも出⾎しやすい傾向にある⽅がいて、分娩や⼿術、怪我などの際に⾎友病の⽅と同様の⽌⾎管理が必要になることもあります。
⾎友病の保因者とは

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<用語解説>
後天性血友病:
体内に存在している血液凝固因子を異物とみなし、排除しようとする自己抗体によって、血液凝固因子の働きが悪くなり突然止血できない状態になる疾患。年間100万人に1.5人の割合で発症するといわれており、免疫機構の異常が関連していると考えられているが詳細はわかっていない。
<用語解説>
血小板:
赤血球や白血球と同様に、血液中に存在する成分の1つ。けがや傷による出血を止める際に重要な役割を果たしてくれる血球のこと。