監修者からのメッセージ
中学生、高校生の6年間は、自分が思い描く「なりたい、未来の自分」になるための大切な助走の時期です。
日常生活の注意ポイント
スポーツを始める前に
中学生になると、部活動もより本格的になり、運動の質も量も強度を増しますが、出血リスクを伴うからといって、スポーツをしない方がよいわけではありません。適切な治療(止血管理)を行いながら、運動して筋肉を鍛えることで、関節が保護されて出血しにくくなる効果も期待でき、骨も丈夫になるといわれています。
部活動や地域のスポーツクラブで取り組んでみたい競技がある場合には、まずは家族や医師、看護師に相談してみましょう。その競技を行う際、どのような工夫が必要か、どのようなリスクがあるか、どのようにしたらリスクを軽減することができるかなど、一緒に考えましょう。そのうえで「やる」と決めた場合は、より丁寧に治療を行いながら、スポーツを楽しんでください。
みんなに役立つ血友病の基礎と臨床(改訂3版). 白幡 聡, 福武勝幸編. 医薬ジャーナル社, 大阪, 2016, p.234.
選んだスポーツで出血した時に
種目や競技によっては、思っていたよりも負担が大きく、止血管理をしっかり行なっていても、出血を繰り返したり、関節を痛めてしまうこともあるかもしれません。そのようなことが起こったとき、周囲に相談せずに無理を続けると、将来、生活上困ることが起こる可能性があります。そんなときには勇気をもって、練習を休んだり、そのスポーツを止めることも考えておきましょう。
- 日々の自己管理をより丁寧に:決められた治療をきちんと行い、必ず輸注記録をつける
- 定期的に受診することが、コンディションのよい身体づくりにつながる:少なくとも、夏・冬・春の長期休みには自分で病院に行き、関節の状態などを確認してもらう
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競技用の靴は、かかとの衝撃吸収性が良いものを選ぶ:足だけではなく足首もサポートできるハイカットシューズで、かかとの衝撃吸収性が良いものを選ぶとよい。
サポーターの使用も推奨
→Smile-On:「正しい靴の選び方」も参照
- 運動の前後には、毎回必ず準備運動とクールダウンを行い、自分の身体のケアに努める
- 関節や筋肉が痛んだり、違和感を感じたときは、無理をせず回復するまで休む
- 同じ関節や筋肉に出血を繰り返すときは、医師に相談して、スポーツ用のサポーターや装具の使用も検討する
- 同じ関節や筋肉に出血を繰り返したり、大きなケガをしたときは、医師に相談して治療を見直す
- 出血のため一定の安静期間をとった場合、医師に相談して適切なリハビリを行い、関節の機能低下を防ぐ
友だちや好きな人に血友病のことを話す?それとも話さない?
これまでにもスポーツの際など、周りの人に自分の病気のこと、身体のことを説明する(説明しなければならない)機会があったかと思います。
これから先は、友だちや好きな人に血友病のことを伝えたほうがよいのか迷うことがあるかもしれません。
もし「話したくない」「話さなくても問題ない」と考えているのであれば、無理に伝える必要はないでしょう。でも、「話したい」「知っておいてほしい」と思う人がいるのであれば、どうして伝えたいと思うのか、伝えた結果、相手にどのようにしてほしいのか(どんな反応を期待しているのか)を考えてみましょう。それによって、いつ、どのように、どの程度伝えるかを整理できるかもしれません。
そして、伝えた結果、あなたが期待していたような反応が返ってこないこともあるかもしれません。そのような場合でも、自分の気持ちと向き合い行動したという経験は、あなたにとってかけがえのないものになるのではないかと思います。
マンガを読む
Q1
スポーツの試合や修学旅行の日程に合わせて、治療スケジュールを変えることはできますか?
A1
日程や活動量に応じて調整が可能です。早めに医師に相談しましょう。
- 宿泊の日程に合わせ、治療のスケジュールを調整する
- 予防的に追加で補充療法を行う、注射する製剤量を調整する など
Q2
学校で製剤を保管する場合、どのように保管したらいいですか?
A2
製剤によって保管方法が異なります。使用している製剤に合った保管方法を確認しましょう。
製剤によって冷蔵保管が必要なものもあれば、室温保管が可能なものもあります。まずは自分が使用している製剤の適切な保管方法を確認しましょう。冷蔵保管が必要な製剤であれば、持ち運ぶ際には必ず保冷バッグを使用し、学校では冷蔵庫に保管しなければなりません。保健室などの冷蔵庫で保管させてもらえないか、学校の先生などと相談してみましょう。
なお、室温保管が可能な製剤の場合でも、自分自身で保管する際には十分な注意が必要となります。学校の保健室などに預けるときには、必要最小限の本数にして、長期間預けたままにしないようにしましょう。
Q3
自己注射もちゃんとしているし、止血管理もうまくいっているのに、受診する必要ってありますか?
A3
自分の望むような生活をするためには、定期的な受診による全身のコンディションチェックが欠かせません。
親御さんではなく、あなた自身が受診しなくてはならないのは、現在の全身状態を確認するため、血液検査や関節のチェックなどを行う必要があるからです。必要な検査を受け、結果について説明を聞いたうえで、今後の治療について医師と相談しながら一緒に決めていきましょう。部活動を続けたい、旅行に行きたい、アルバイトをしたいなど、あなたがどのような毎日を過ごしたいと思っているか、自分の希望を具体的に伝えることが大切です。
少なくとも夏・冬・春の長期休みには、必ずあなた自身が受診してください。受診時には、輸注記録を忘れずに持参しましょうね。
輸注記録が大切な理由
輸注記録は「医師の指示どおりに注射しているか」をチェックするものではなく、「今行っている治療が、現在のあなたの身体の状態に適しているのか」を確認するために欠かせないものです。家族まかせにせず、自分でしっかり記録していきましょう。
- 現在の輸注量や回数で、十分な止血効果が得られているか確認できる
- 小さな出血や関節の違和感、体調の変化などを記録しておくことで、受診時の検査だけではわからない情報を医師に伝えられる
- 部活の練習・試合などを記録・確認しておくことで、医師と治療スケジュールなどを相談できる
- 注射を忘れたことを記録しておくことで、前後の生活の記録などから、その理由や次に忘れないための対策を医師や看護師と一緒に考えることができる
- 適切な止血管理ができているかどうか、医師、看護師に確認してもらえる
手軽に記録できるスマートフォン用の多機能アプリもあります。入手方法については、医師や看護師に聞いてみてください。
親御さんへのメッセージ
「忙しいから無理!」と受診しようとしないお子さんを、「仕方ない。勉強や部活のほうが大切だし…」と認めてしまっていませんか。
お子さん自身が受診することは、体調の確認のほかにも、医師や看護師からのアドバイスを得ながら、お子さん本人にとって大切なことを自分自身で決定していく大切な機会でもあります。
少なくとも夏・冬・春の長期休暇には、必ずお子さん本人が受診するように話してください。
次のライフステージにむけて
進学や就職など、将来の進路について考えるときは、まず「自分は何をしたいのか」「何を目指したいのか」を考えてみることが大切です。自分の希望を実現するための可能性や手段・方法について、調べたり、考えたり、話を聞いてみたりしましょう。
血友病の治療に必要な費用は、加入している健康保険と国の助成制度によって補助されていますが、18歳、そして20歳になるときに事前に手続きをしないと、助成制度が途切れ、自分で支払う金額(自己負担額)が発生してしまいます。自分がどのような助成制度を活用しているのか確認して、用意すべき書類や具体的な手続きの方法について、早めに医療スタッフに相談しておきましょう。