監修者からのメッセージ
本格的に自立へと歩みはじめるこの時期は、一人暮らし、就職、恋愛、結婚など、人生における大きなイベントをいくつも経験します。
でも、困った時や相談したいことができた時には、遠慮しないで、医師や看護師に声をかけてくださいね。
日常生活の注意ポイント
遠方へ転居する前に
進学や就職、転勤などで遠方へ転居することになったら、新しい生活エリアで治療を続けるため、新しい病院の選択や医療費助成制度の申請などの準備が必要になります。
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新しい病院の選択と医療情報の引継ぎ
転居によって、これまで通院していた病院への受診が難しくなる場合、新しい生活エリアで病院を探すことになりますが、医師とよく相談して、あなたにとって最適な病院を検討しましょう。新しい病院には、これまでの医療情報を正確に伝達することが大切です。医師に紹介状を書いてもらいましょう。
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医療費助成制度の申請と更新手続き
血友病の治療は、国の助成制度である「特定疾病療養費」、「小児慢性特定疾病治療研究事業(20歳未満)」、「先天性血液凝固因子障害等治療研究事業(20歳以上)」などによって費用が補助されていますが、18歳、20歳になる際、助成制度の空白期間が生じないように事前手続きが必要です。また、公的医療保険(健康保険)については、転居や就職に伴い、申請や更新の手続きが必要になることがあります。自分が活用している制度について確認し、用意すべき書類や具体的な手続きについて、早めに医療スタッフに相談しましょう。手続きを忘れ、助成制度が途切れてしまうと、自分で支払う金額(自己負担額)が発生することがあるので、十分にご注意ください。
→Smile-On:「医療費助成について」も参照
旅行や出張にでかける前に
学生時代には部活動やサークルの合宿で、就職してからは研修や出張などで、子どものころより外泊する機会が増えます。ときには、滞在期間が長期に及ぶこともあるでしょう。事前に医師に相談して、治療薬の事前準備や必要に応じ治療スケジュールの調整をするようにしましょう。
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患者カードの携帯
万が一、何らかのトラブルが生じたときに円滑に対応してもらうためにも、患者カードを用意し、常に携帯するとよいでしょう。
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治療薬の事前準備
滞在期間に応じて、必要な治療薬の種類と数を確認し、持参します。治療薬によって保管方法が異なるため、使用している治療薬にあった保管方法も確認しましょう。冷蔵保管が必要な場合は、移動時には必ず保冷バッグを使用し、滞在先では冷蔵庫に保管してください。また、注射をする際の環境(どこでどのように自己注射をするか)についても、下調べをしておくと安心です。
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旅先の医療機関
国内の場合:
念のため、診察してもらえる病院を滞在先の周辺で探しておき、受診する際に病院に提出できるように、医師に紹介状を書いてもらい持参するとよいでしょう。海外の場合:
治療薬を預入荷物に入れる場合には、破損しないように梱包して、さらに衣類やタオルなどの間に入れます。なお、預入荷物の紛失や、治療薬の破損の可能性を考え、少量の治療薬は手荷物として機内に持ち込みむ際には、税関、客室乗務員、空港セキュリティ宛の英文レター(血友病であること、治療に必要な製剤を持参していることなどを記載)を、医師に作成してもらいましょう。
→Smile-On:「短期(3ヵ月以内)海外留学 血友病の方のための留学準備「持ち物の準備を万全にする」も参照
生活環境の変化への対応
進学や就職、転勤などで生活環境が変わるとき、最初の数ヵ月間は、新しい生活リズムに慣れ、人間関係を築いていくための大切な期間です。大変な時期ではありますが、治療をきちんと続け、よいコンディションを保つように心がけてください。特に就職した直後は、欠勤や早退などで仕事に支障をきたすことがないように、急な出血に備えて対応策を考えておくことも大切です。試用期間中は受診が難しくなることも想定して、あらかじめ必要な治療薬を確保できるようにしましょう。
血友病のことを伝えるか、伝えないか
多くの人と関わり、人間関係を築いていくうえで、血友病のことを伝えたほうがよいのか、どのように説明すべきか迷うことがあるかもしれません。その際は、伝えたほうがよいと考える理由、伝えた結果相手に求めること(どのようにしてほしいのか)を整理してみるとよいでしょう。
職場
最近では、血友病であることを告げずに勤務している患者さんも多くいます。血友病のことを伝えない場合は、急な出血で長期欠勤することのないように治療をしっかり行い、業務に支障が出ないように体調管理しましょう。なお、関節への負担が大きい業務を回避したい等、業務上の配慮が必要な時は、伝える内容を医師や看護師からアドバイスしてもらい、上司などに説明してみましょう。
パートナー:彼女、婚約者
血友病について伝えるタイミングは人それぞれのようですが、正しい情報が伝わるように工夫が必要かもしれません。いつ、どのように伝えるか、医師や看護師に相談してもよいでしょう。これまでたくさんの血友病の患者さんと関わってきた経験から、参考になるヒントが得られるかもしれません。
子ども
成長していく中で、あなたが注射をする様子をお子さんが目にすることもあると思います。お子さんから尋ねられたら、それぞれの成長に合わせたわかりやすい言葉で、病気のことを伝えるとよいでしょう。「知っているはず」とあいまいなままにせず、いずれかのタイミングできちんと説明する機会をもつようにしましょう。女の子であれば、将来的には保因者であることを告げる必要があります。
→Smile-On「血友病保因者について」も参照
Q1
これまで関節内出血したことはありません。治療を続ける必要はありますか?
A1
治療をやめれば、いずれ出血します。自分のライフスタイルに合わせた治療法を選択し、無理なく自己管 理を継続していくことが大切です。
治療法はとても進歩し、適切な治療と日常生活の注意点を知っておくことで、血友病でない方と同じように生活できるようになってきました。子どものころから治療を続けている場合、これまで一度も出血したことがない方もいるかもしれません。しかし、それはこれまで治療を続けてきたから。治療を止めればいずれ出血し、出血を繰り返すことで関節や筋肉に障害が生じ、長期間の休養を余儀なくされるなど日常生活にも支障をきたす恐れがあります。
現在では、血友病の治療にはたくさんの選択肢があり、ライフスタイルに合わせて、注射方法やタイミング、回数、場所などを選ぶことが可能です。自分らしい生活を続けるために、無理なく自己管理を継続していくためのベストな方法を、そのときどきの状況に応じて相談するとよいでしょう。
Q2
血友病以外の病気や緊急で治療を受ける場合はどうすればよいですか?
A2
患者カードを携帯し、緊急時には医師と連絡がとれる体制を整えておきましょう。
血友病以外の病気で治療を受ける際には、血友病であることを事前に医師に伝えましょう。また、事故などの緊急時に備えて、血友病の担当医と連絡がとれる体制を整えておくと安心です。
そのためにも、あなた自身の基本的な情報をまとめたカードを用意し、財布などに入れ、常に携帯しておくとよいでしょう。
患者カードへの記載内容
- 氏名(ふりがな)
- 血友病のタイプ・重症度
- 使用している治療薬、治療スケジュール
- 緊急連絡先/担当医、緊急時の対処法 など
出血が予想される治療:外科手術、歯科治療など
補充療法を検討する必要があります。あらかじめ治療内容を確認したうえで、血友病の担当医に相談し、受診する医療機関に伝えるべき内容について確認しましょう。
出血を伴う可能性がある検査:内視鏡検査など
事前に検査・処置の内容、出血リスクなどを確認して、血友病の担当医に対応を相談しましょう。
歯科受診のすすめ
出血を伴う抜歯を回避するためにも、毎日のデンタルケアによる虫歯や歯周病の予防はとても大切です。医師や看護師に相談し、血友病患者さんを多く診療している歯科医を紹介してもらうと安心です。
Q3
娘が確定保因者です。いつどのように伝えるべきか悩んでいます。
A3
早い段階で一度医療者に相談しましょう。同じ立場の人の体験談も参考になるかもしれません。
娘さんが将来設計を考える上では、同じ立場の人の体験談も参考になるかもしれません。お近くの患者会については、医師や看護師に相談してください。
→Smile-On:「血友病保因者について」も参照
次のライフステージにむけて
年齢を重ねても、関節をよい状態に維持していくために、適切な運動を心がけるようにしましょう。運動や食事のコントロールにより適正な体重を維持することは、将来の生活習慣病予防にもつながります。