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学校体育における
柔道の注意点

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学校体育における柔道の注意点

※柔道は相手と身体がぶつかり合うスポーツです。この企画は、血友病の方に柔道を推奨するためのものではありません。

2019.04.01

2012年(平成24年)4月から全国の中学校で武道の授業が必修となりました。武道のうちでも柔道を選択する学校が多いようですが、柔道は相手と身体がぶつかり合うため、血友病の方に推奨されるスポーツではありません。そこで、中学校で授業を受ける前に、柔道の注意点について知っていただくことを目的として、柔道を体験するイベントを2018年12月に東京都の講道館で開催しました。当日は、保護者の方や血友病でないお子さんも一緒に参加いただきました。限られた時間ではありましたが、血友病の方が注意すべきことや、知っておきたいケガのリスクなどについて、柔道の模擬授業を通して体験していただきました。
今後、柔道の授業に参加できるかを検討する際の一助にしていただければ幸いです。

ご監修者のコメント

  • 天野 景裕 先生

    東京医科大学 医学部医学科
    臨床検査医学分野 教授

    柔道は、血友病の方に推奨されるスポーツとは言えません*。しかし、多くのお子さんが中学生になると柔道に向き合うことになります。保護者の方に柔道の経験がなかったり、授業でどこまでのことをするのかが知らされていなかったり、あるいは実際にお子さんの身体にどのくらいの負担がかかるのかが分からなかったりするために、特に血友病のお子さんをお持ちの保護者の方にとってはご心配のことと思います。このため、今回のイベントでは、保護者の皆さんにも一緒に体験していただきました。まずはお子さんの体調を考慮しながら、どこまで参加できるのかをご家庭で話し合っていただければと思います。体調について少しでも心配なことがあれば、必ず担当医と学校に相談してください。また、定期補充療法を行っている場合でも予備的な製剤の使用について担当医と確認しておくようにしましょう。

    *:米国血友病財団(NHF)のリスク分類(National Hemophilia Foundation(NHF):Playing it Safe Bleeding Disorders, Sports and Exerciseより一部改変)(閲覧日:2018年4月10日)

  • 鈴木 智裕 先生

    聖マリアンナ医科大学病院
    リハビリテーション部 理学療法士

    ヨーロッパでは日本よりも柔道が盛んで、特に子どもの頃に何かのスポーツと合わせて柔道を習わせることが多いそうです。安全に転ぶ=受け身をとる、立ち上がる、倒されないように耐える、柔道に必要なこの要素は体幹を鍛えることにつながるからです。子どものうちに、安全な転び方や身のこなしを学ぶ経験は、今後の人生において、転倒した際などに自分の身を守ることにも役立つと考えています。
    定期補充療法の普及により、血友病の方がスポーツをする機会が増えたと思います。スポーツ種目として関節に負担がかかりにくいという意味で水泳が選ばれることが多いと思いますが、日常生活で必要とする筋力を付けるためには、陸上でのスポーツ種目も適度に取り入れるとよいと思います。どのスポーツにおいても、調子が悪い時には休んだり、負担がかからないように動作を工夫したりして、無理なく行うことが大切です。

古賀さんのコメント

古賀 稔彦 さん

柔道八段、古賀塾塾長、医学博士
バルセロナオリンピック
金メダリスト

柔道(講道館柔道)は、1882年(明治15年)に、嘉納治五郎先生が講道館において創始した武道です。嘉納師範は、柔道の練習を通して、心身の力をもっとも有効に働かせることを身に付けて、社会の発展に貢献してほしいと願い、「精力善用自他共栄」という言葉を掲げました。
●精力善用 ― 心身の力をもっとも有効に働かせること
●自他共栄 ― 自他ともに社会全体が栄えていくこと
これは、ただ力を付けて強くなればよい、大会で勝てばよいということではなく、柔道を通してやさしい人になりましょうということです。やさしい人になると、周りの人たちが応援してくれます。応援があると、みなさんも頑張ろうという気持ちになりますね。頑張って自分の夢や目標に近づくために、みなさんもやさしい人になるように努力しましょう。

<はじめに> 
学校体育における柔道指導 1)、2)

柔道は、中学校で初めて学習する運動種目で、礼に代表される伝統的な考え方などを理解するとともに、「基本動作」と「基本となる技」を身に付けることが授業のねらいです。

「基本動作」とは、相手の動きに応じて行う姿勢と組み方、進退動作、崩しと体さばき、受け身のことです。受け身には、後ろ受け身、横受け身、前回り受け身などがあります。膝をついた衝撃の少ない姿勢から始め、徐々に中腰、立位からと段階的に進みます。
「基本となる技」には、投げ技と固め技がありますが、受け身が身に付くまで投げ技は行いません。また、固め技については、中学校の授業では通常は抑え技のみを行い、関節技などは行いません。
※授業内容の詳細は、各学校の指導要領により、また学年によっても異なりますので、学校に確認してください。

体育の授業では、頭を打たない・打たせないために「受け身」の練習をしっかりとやることが大切です。投げ技の練習をする際には、投げる人が投げられる人の柔道着を最後までつかんで離さないなど、双方が「頭を打たない・打たせない」ように注意することが大切です。無理な姿勢で技をかけるのはやめましょう。一方、投げられる人は潔く自分から受け身をとる習慣を付けることが大切です。投げられまいとからだを低くしたり、腰を引いたり、手をついたりするとケガのリスクが高まります。なお、授業では、なるべく同じくらいの体格の人と組んだ方がよいです。

文部科学省では、必修化された武道のうち、特に柔道については、不安の声があることに鑑み、安全管理の徹底について通知を発出して、事故の防止策や事故の際の対応について提示するとともに、無理がない指導を求めています。各学校においては、柔道に限らず生徒の安全は最重要課題であり、安全な柔道指導に留意されています。

1) 文部科学省:学校における体育活動中の事故防止について(報告書)(閲覧日:2019年3月5日)
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/jyujitsu/1323968.htm

2)文部科学省:柔道の授業の安全な実施に向けて(閲覧日:2019年3月5日)
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/judo/1318541.htm

血友病の方が柔道の授業を受ける前に気を付けておきたいこと
柔道では、正座や蹲踞(そんきょ:膝を開いてしゃがむ姿勢) をとるため、予め膝関節や足関節の可動域を確認しておきましょう。
正座や蹲踞が難しい方や、血友病性関節症や出血歴のある方は無理をせず、事前に学校の先生や担当医に相談しましょう。

<今回の柔道イベントより> 
体験した内容と主な注意点

座り方
  • 正座、安座(あんざ)

    いわゆる“体育座り”をしていると、もしも倒れてきた人がその膝に乗っかってしまうと危険です。このため、柔道では正座か安座(あんざ:あぐらの姿勢)で座ります。しかし、正座は膝に負担がかかるので、正座ができない、または長時間の正座が難しい方は、事前に学校の先生に伝えましょう。

  • 蹲踞(そんきょ)

    膝を開いてしゃがんだ姿勢です。股関節や足関節の可動域が広く、下半身の柔軟性が高くないととれない姿勢です(写真左)。蹲踞が難しい場合には無理をせず、調子の悪い方の足の膝を少し前に出して“立て膝”の状態でしゃがむなどし、関節に負担がかからないように工夫しましょう(写真右)。

ウォームアップ

前転、後転

  • 手をつく動作がうまくできないと首に負担がかかります。からだを丸めて転がる動作と、丸めたからだを手で突き上げる動作を連続して行うことをポイントに練習しましょう。

受け身

受け身をとることで、投げられたり倒れたりした時の衝撃を分散させて、からだに強い衝撃を与えないようにします。ダメージを抑えられるので、ケガの予防につながります。

掲載日:2019年4月1日

後ろ受け身

  • 雪道で滑った時など、後方に倒れる時に有効な受け身です。後頭部の強打を避けるために用います。背中を丸めて首を起こした状態で、背中が着地する瞬間に地面(畳)を手で叩きます。
    後頭部を打たないように、へそや帯を見るようにして顎(あご)を引きます。
  • 横受け身

    横から倒れる際に用います。首を起こした状態で地面(畳)を手で叩き、衝撃をやわらげます。右足と左足が交差したり、重なったりするとケガにつながるので注意しましょう。

  • 前回り受け身

    つまずいたりして前に倒れそうな時に、頭部を打たないようにするために用います。顎(あご)を引き、からだを丸めて、前の方に“でんぐり返し”をすることで衝撃をやわらげます。

授業での注意点の補足

今回のイベントは、多くの柔道家や大学柔道部の学生さんにサポートしていただきながら開催しました。実際の体育の授業では、体育の先生がお一人で授業を行うことになりますので、十分に目が行き届かない場合もあるかもしれません。
授業への参加に際しては、事前に担当医の先生、学校の先生に相談して、しっかりと準備し、無理のない範囲で行うようにしましょう。

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