インヒビターとは

2024.07.18

監修

自治医科大学医学部生化学講座病態生化学部門 教授 大森 司 先生

血友病患者では、治療に用いられる凝固因子製剤を異物と認識して、投与後に第Ⅷ因子や第Ⅸ因子の働きを阻害する抗体が発生することがあり、この抗体を「インヒビター」とよびます。一旦、インヒビターが発生すると、補充療法の効果が減弱または消失するため、治療法の変更が必要になります。インヒビター保有の⽅の治療法は、出⾎時の⽌⾎を⽬的とする「インヒビター中和療法」、「バイパス⽌⾎療法」とインヒビターを消失させることを⽬的とした「免疫寛容導⼊療法」があります。また、止血療法としては、2018年5月に バイスペシフィック抗体製剤(エミシズマブ)の定期投与が加わりました。
・インヒビター中和療法:インヒビターの程度が軽い時に行われます。インヒビターの作用を中和する高用量の第Ⅷまたは第IX因子製剤を投与する治療です。
・バイパス止血療法:第VIII因子や第IX因子の経路ではない、別の止血機能を働かせて(バイパス)、インヒビターに影響を受けずに止血させる治療法です。活性型第VII因子が用いられます。
・免疫寛容導⼊療法:第Ⅷ因子または第IX因⼦を⻑い間繰り返して使⽤することでもともと自分の体の中にあるものと思わせ、インヒビターを作らなくさせる治療です。
・エミシズマブ:活性型第IX因子(Ⅸa)と第X因子に結合し、IXaによる第X因子の活性化反応を促進することで、血友病Aで不足している第Ⅷ因子の機能を代替する抗体医薬品です。第Ⅷ因子と異なる構造を持つので、第Ⅷ因子に対するインヒビターを持つ場合にも効果を示します。
TOPへ戻る