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正しい靴の選び方第2回
正しい靴を履いていますか?

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正しい靴の選び方
-第2回 正しい靴を履いていますか?-

2019.01.11

  • 監修:
    特定非営利活動法人(NPO)
    オーソティックスソサエティー 理事長
    整形外科医
    内田俊彦先生

Part1

「ゆったりした靴の方がよい」と思い込んで、大きめの靴を選んでいませんか?

「育ち盛りの子どもは、すぐに足が大きくなるから、ワンサイズ大きい靴を買うようにしている」という保護者の方は多いのではないでしょうか。しかし一般に、子どもの足は成長するといっても3歳以降になるとサイズ(足長)【図1a】は、半年間で5mmずつしか大きくなりません。このため、ワンサイズ大きめのものを買ってしまうと、お子さんはサイズが合っていない靴を半年近くも履き続けることになるのです。

また、大人でも「私は幅広・甲高の足だから、いつも2Eなどの幅が広めでゆったりしたタイプのものを選んでいる」という声を多く耳にします。実は、これまで日本人の足は幅広・甲高といわれてきましたが、日本人の体型は徐々に変化しており、ワイズ(足囲)【図1b】が欧米人並みに細くなってきているのです。実際、20代の女性67名の足のワイズを測定したところ、2E以上のいわゆる幅広タイプは30%に過ぎなかったとのデータ1)もあります。

図1 足長(サイズ)・足囲(ワイズ)・足幅

1)内田俊彦:関節外科 31(1) 66-71, 2012

つまり、多くの方が足を正しく測定することのないまま、「ゆったりした靴の方がよい」と思い込み、足に合っていない大きめの靴を選んでしまっているのです。

とくにこれまでずっと幅広の靴を履いてきた方は、ぴったりの靴を履くと最初は「きつい」と感じ、より大きな靴を求めがちです。しかし、私のところに「幅が広い3Eの靴を履いても足が痛くなる」といって相談に来られた方々に、足の大きさを正しく測定し、ぴったりした細身の靴を合わせてあげると、みなさん「歩きやすいし、履いていてとても気持ちがいい」と感想を述べられます。そして、そのジャストフィットした靴のサイズやワイズが、普段履いていた靴のものよりもかなり小さいことに驚かれます。

みなさんは、ジャストフィットした気持ちがいい靴を履いていますか? もしそうでなければ、「ゆったりした大きめの靴がよい」という思い込みは捨て、一度、靴の専門家に足を正しく測定してもらってはいかがでしょう。

※ワイズ(足囲):親指と小指の付け根あたり、左右の足幅が最も長いボールジョイントと呼ばれるポイントでぐるりと一周した長さのこと。
英語では、「Ball girth(ボールガース)」と称されるが、日本ではこれを幅(width)と捉えて「ウィズ」、もしくは「ワイズ」と呼ばれることが多いので、ここでもワイズ(足囲)と表記する。

大きすぎる靴を履き続けていると、足のみならず、やがて全身にまで悪影響をおよぼします。

足に合わない大きすぎる靴を履いていると、さまざまな不具合が生じてきます。まず、歩いたり走ったりする時に足が靴の中で前滑りし、足指の先が靴先にぶつかって曲がってしまいます【図2】。足指が曲がっていると踏ん張りがきかないので、長い間立っていることができません。また、バランスも崩しやすいので、転びやすくなります。さらに、足指をうまく動かせないために地面を蹴る力が弱くなり、走るのも遅くなってしまうのです。

そして、ずっと合わない靴を履き続けていると、やがて外反母趾や変形性膝関節症といった足のトラブルに見舞われたり、身体のバランスの歪みによる腰痛や肩こりといった不調を来したりすることもあります。

一度、ご自身が履いている靴をチェックしてみてください。もしも靴底の減り方や履き口の形に左右で大きな差がみられたら、それは身体のバランスが歪んでいるサインです【図3】。

図2 大きすぎる靴を履くことでの不具合

図3 靴の変形とその原因

  • 両足とも外側の靴底がすり減っている。
    これは歩行の際に、足が外側に傾きながら動いている方に多い。
    その他の靴や中敷きの変形からみた足の不具合についてはこちらから
  • 両足とも履き口が変形している。
    これは歩行の際に、足が左右に横揺れしている方に多い。

子どもの発育過程において、靴は足の形を正しく整える“鋳型”の役割をします。
足の骨格ができあがる小学校高学年ぐらいまでのお子さんの靴選びはとても大切です。

そもそも、なぜ人は靴を履くのでしょうか。靴は、足を衝撃や暑さ・寒さなどの刺激から守り、歩行や運動をしやすくします。また、ハイヒールやおしゃれ靴は、ファッション性を高めてくれます。このように、靴にはさまざまな役割があります。しかし、最も忘れてならないのは、“靴が子どもの足を作る鋳型となる”ということです。

実は、足首から下にある踵(かかと)の骨(足根骨:そっこんこつ)は、大人では7個ありますが、生後すぐの乳児では柔らかな軟骨が2個しかありません。その後、成長するにつれてだんだん骨の数が増え、1歳半では4個、4歳頃では6個、そして10歳頃になってやっと骨の数が揃い、骨自体も成長して硬くなって、18歳頃にようやく大人と同じような骨の作りになります【図4】。

この発育過程において、靴は足の形を正しく整える“鋳型”の役割を果たします。この“鋳型”がきっちりしていないと、子どもの足が正しく形作られません。

この子どもの足の変形は現在、深刻な問題になっています。既に幼稚園児の5%弱、小学生の30%弱に外反母趾が認められています2)。また、通学用のローファーが原因で外反母趾となることも少なくありません。外反母趾と聞くと、先が細くてヒールが高い靴を履いている成人女性だけがなるもの、と思われるかもしれません。しかし、大きくて足に合っていない靴が子どもの外反母趾の要因の一つとなっているのです。

図4 足根骨の成長

2)内田俊彦:小児歯科臨床 9(6)23-33, 2004

足にぴったり合った靴を履いたり、補正用の中敷き(インソール)を靴に入れたりすることで
身体のバランスが整い、パフォーマンスが向上します。

足は身体の土台です。土台がしっかりしていなければ全身を支えられません。この土台となる足にぶかぶかの靴を履かせていては、姿勢や体幹に歪みが出てしまうのは当然です。歪みが出ると、身体は無理に余分な筋肉を使ってまでそれを元に戻そうとします。結果、負担がかかった分だけパフォーマンスが落ち、疲れやすくもなるのです。

逆に、しっかりした土台を作るべく、ぴったりした靴に履き替えたり、バランスを補正するための中敷き(インソール)を靴に入れたり、さらには靴紐をしっかり締め直したりするだけでもパフォーマンスが向上し、同じ距離を歩くにも歩数が少なくなったり、正しい歩行姿勢になったりします【動画】。

スポーツ選手でも靴を替えたり、中敷きを工夫したりするだけで記録が大きく伸びることは往々にしてあります。また、変形性膝関節症でO脚だった方が、ジャストフィットの靴にして専用のインソールを入れ、歩行の動作を補正したところ、数年後にはO脚が改善していたということもよくあることです3)。このように靴は、私たちの身体の動きと密接に関係しているのです。

3)内田俊彦ほか:靴の医学 30(2) 147-153, 2016

Profile

  • 特定非営利活動法人(NPO) オーソティックスソサエティー 理事長 整形外科医
    内田俊彦先生 プロフィール

    1977年に昭和大学医学部を卒業。昭和大学藤が丘病院整形外科、神奈川県立子ども医療センター、船橋渡辺整形外科病院を経て、2002年にNPOオーソティックスソサエティー(医師・理学療法士・柔道整復師・鍼灸師等の医療従事者と靴業界で結成された足と靴の専門家集団)の理事長に就任。現在は、東京都に足と靴の治療モデル店で、足と靴の専門家として整形外科医の立場から子どもから高齢者までの靴選びや、フットケアトレーナーの育成に従事。子どもの“足育”にも力を入れている。

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